タレントやアナウンサーの高齢出産報告ラッシュが続いている。かつては30歳でマル高などと言われた高齢基準も、現在では初産なら35歳とする見方が一般的。一方で、周囲を見回してみると、実際には40歳前後での初産が増えている、と感じる方は多いのではないだろうか。
高齢出産の現実について、危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏はこう話す。
「仕事でキャリアを重ねているうちに妊娠・出産のタイミングを逃す方も多いようですし、生殖医療の進化に伴って出産時期の高齢化は顕著になっています。体力には個人差があり一概には言えませんが、高齢出産の方が妊娠合併症を発症するリスクが高い傾向にあることや、産後の体力不足といった懸念があることは否めません。
それに加えて、親が高齢化していて産後のサポートを頼めないといった不安材料がある人もいます。出産後に育児する人が孤独にならないよう、事前に家族で計画を立てておくことも大事ですね」
*医学的には「高齢出産」の基準はありません。
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今回高齢出産について話を伺ったのは、43歳で初めての出産を経験し、現在45歳の大堀るいさん(仮名)。
「産前の目標では、今の私の年齢で2人目を妊娠しているはずでしたが、2人目なんてとんでもない話です。息子は今ようやく2歳になりましたけど、実はまだ乳離れしなくて夜泣きもするので、ストレスは相変わらず200%ですね」
ストレス200%の状態が何年も前からずっと続いていると苦笑いで語るるいさん。覚悟していたつもりだったが、不妊治療・妊娠・出産・育児の大変さは、想像を大きく超えるものだった。
「5年間不妊治療を続けましたが、ある日夫がもうやめたいと言ってきました。私が助成金のリミット年齢目前になったということもあったと思う。彼もつらい思いをしながら、私の願いを叶えようと耐えていましたので。
何度も泣きながら話し合って治療をやめると決めたのに、不妊治療をやめた4か月後に自然妊娠しました。信じられなかったですね」
強いストレスがかかっていた5年間は何だったのだろうと思ったるいさん。
「喜びもつかの間、つわり地獄が待っていました。最初はつらいことさえ嬉しかったですが、今度はあまりのつらさに嬉しさを忘れるという……。とにかく一日中ひどい乗り物酔いしているみたいで死ぬかと思いました」
つわりと戦う傍ら、期限のある羊水検査を受けるかどうかの選択にも悩んだ。夫・友人・親から受けた方がいいと強く言われたことで、もともと受けるつもりがなかったるいさんは大きく揺さぶられ、それがストレスとなった。
「今って普通に羊水検査を受ける方も多いけど、私にはできませんでしたね。命の選別ってやつですか。少ないとはいえ流産のリスクがあるというのもネックでしたし、きれいごとみたいですが、あれだけ欲しかった子がその検査で何か見つかったからといって『いらない』とか、それはないなと」
しかし、夫は羊水検査を強く望んだ。
羊水検査に強い拒否を示するいさんとは裏腹に、検査を強く望む夫。「我が子が障がいを持つこと」に対しての、大きな意識の違いがあったという。
後編に続く
取材・文 中小林亜紀