「最近の人は、男の人でも痴漢や性暴力の被害者になるということを知っています。でも、昔の人たちの中には、男性を狙った性犯罪がある事実を知りながら『男のくせに自分の身も自分で守れないなんて情けない』という発想に繋げてしまう人もいるんです」
帰宅した義父は「話にならない」と憤りをあらわにしていた。高年層の男性たちの中には、「性犯罪を起こすような男など女を口説くこともできない軟弱者や、よわっちい男色家に決まっている」などと言って、差別意識を露呈する人もいたという。
「だから、男の子であれば、そんな奴には自力で対処できなければならない、という考えだというんです。何をもって軟弱と言っているのかわからないですし、性犯罪者が軟弱という決めつけもめちゃくちゃなのですが、何より、だからといって男児を守らなくていい理由にはならないんです」
こんな田舎ではそのような性犯罪はなかなか起きない、という思い込みに対しても義父は強い危機感を抱いている。
「田舎は人の目が少ないからこそ狙われる。だから、せめて交差点での旗持ちを下校時にもしようではないか」と義父は食い下がった。
だが、周りはけんもほろろであった。情報が早く、また正義感の強い義父はいつしか「いつもこんなことばかり言っている大げさな人」ととらえられている節もある、と由梨花さんは思う。それにしても、性犯罪に対する認識が甘すぎると言わざるを得ない。
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