お盆の真っ只中、いろんな家族の形があることを実感している方も多いだろう。老人ホームに入っている親族がいる方も少なくないだろう。
北海道函館市の特別養護老人ホームで、一部の職員が入所者の体を家族の同意なく拘束していたこニュースは記憶に新しい。施設はやむにやまれずやったと事実を認めて謝罪し、再発防止策を立てて取り組むとしている。なんともやるせない事件だが、これが高齢化社会の課題である。
危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏は、高齢者施設選びについてこう指摘する。
「高齢者施設を選ぶ際には、求める条件を洗い出したうえでチェックポイントを絞って事前に見学するようにしましょう。介護サービスを必要とする場合には、規定の人員がきちんと配置されている施設かどうか見てくることも重要です。
また、入所するご本人以外に、子ども夫婦やきょうだいなど、できるだけ複数人で見学や説明に立ち合い、意見交換も行うことをおすすめします」
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高齢者施設でのトラブル等について取材をしていくと、入所者である実母の訴えと、妻、施設側との言い分に食い違いがあり、施設の変更を検討したいが悩んでいる、という男性から話を聞くことができた。
取材に応じてくれたのは、コロナ禍を含む4年半ほどを単身赴任先で過ごした会社員の大前幹人さん(53歳・仮名)。
「赴任数ヵ月後にコロナ騒動が起こり、最近になって地元に戻りました。単身赴任する際、入院していた僕の母を医療サービス付きの高齢者施設に入所させたんです。入院の延長も転院も断られたし、家で介護するには妻の負担が大きすぎるし、そもそも医療上のケアが必要だったので」
幹人さんの家族構成は、2歳年下でパート従業員の妻、大学生と高校生の2人の息子、そして実母の5人である。
「そもそも施設を選ぶ時に選択肢が少なかったんです。医者や看護師が常駐する施設なんて僕の自宅がある地域ではごくわずかなので、積極的選択よりも消去法で決めざるを得なかったのが実際のところです」
単身赴任が決まってバタバタしているところへ母親の問題が浮上し、施設選びは概ね妻に任せてしまったそうだ。
「妻はホームページなどで口コミをチェックしつつ、相談員と連携して施設を決めました。母本人ももちろん見学に連れていったけれど、その1年ほど前に脳の疾患で倒れた後遺症で言葉が思うように出なくなっていたこともあり、大して家族会議もせずバタバタと入所を決めてしまいました」
幹人さんは、妻から聞いた「施設の口コミは上々」だという説明を鵜呑みにした。
「妻はしっかり者ですし、若い時は多少愚痴もこぼされたけど、僕の母ともそこそこ仲良くやっていたので、施設は熱心に選んでくれていましたよ。いえ、そうだと思っていました」
幹人さんは忙しさにかまけて施設の見学に同行すらしなかったが、妻が首尾良くやってくれるはずだと丸投げしたままだった。しかし、赴任先に発つ直前、施設に入所したての母の顔を見に行って驚いたことがあったという。