6月からの定額減税。ここにきて給与明細への金額明記を義務付ける方針が明らかになり、物議を醸している。危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏はこう話す。
「1ヶ月もないところでの決定に驚きの声、そして怒りの声が上がっています。国民に減税を実感してもらうことが狙いでしょう。対象は5000万人とのこと。事務手続きに加え、費用もかかるに違いありません。中小企業にとっては死活問題になりかねませんね…」。
金額明記よりも消費税の減税など、別の施策を行って欲しいという声も多く聞こえる。
「それはそうなりますよね。金額明記が義務となれば、事務作業、手続きなどが増えることは明白です。システム改修が必要になるところもあるでしょうね。もう来月に始まるのにこれは、ひどすぎる」。
どうしても「減税」を印象付けたい思惑が垣間見える。今回はそんな給与処理に揺れる地方の小さな企業で働く女性に話を聞いた。
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遠山理佐さん(仮名・46歳)は、建築関連の企業で経理や給与業務などを担当している。普段から仕事は忙しく、てんてこまい。特に6月はやることが多いと嘆く。
「社会保険料の見直し、いわゆる算定基礎届けの準備があるのでとにかく猫の手も借りたい忙しさ。それに加えて、賞与の準備もあります。5月はそもそもゴールデンウィークがあるので出勤日が少なく、ただでさえ忙しいんです。その上、減税表記…。1人1人確認が必要なことは明白です。今から先が思いやられます」。
大きな会社ならシステム導入も考えられるが、そうもいかない中小企業もあるだろう。
「システムを導入しても確認は必要でしょうから、その点では変わりません。ただ、うちのような会社は、今後も続くかどうかわからない減税に対応するシステムを導入するほどの資源がないので、マンパワーで乗り切るしかない。正直、今から目眩がしそうです」。
マンパワーで乗り切ることになれば、当然ミスも増える。
「そうなんですよ。しかも今回の場合、ひとりひとり扶養の人数も給与も異なりますから、作業はかなり煩雑なものになると予想されます。実は今、同僚の女性が親御さんの介護で休みがちなんです。そんな環境もあって、本当に厳しい。どうして、一律給付じゃダメなんでしょうか…」。
理佐さんは、長らくこの会社に勤めているそうだが、ここ数年の忙しさは半端じゃないとため息をつく。
「インボイスも始まったでしょう?それでもかなり、仕事が増えました。こんなこと言いたくはないけれど、若い子たちは本当にきつい仕事はやらない。残業もそんなにやりたくありませんとはっきり言われてしまう。ハラスメントと言われたらひとたまりもないので、ぐっとこちらもいろんなことを飲み込みます。結局、残業をする羽目に」。
社長に恩があるからこそ、続けられるんだと話す。