昨年、性加害問題に揺れたジャニーズ事務所が謝罪会見を開いたことは記憶に新しい。
今後、どのようなことが問題になるのだろうか。危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏が語る。
「もちろん補償については進捗を見守って行かなければなりません。
一方で今後は、事実をともに隠蔽し続けた報道各社や企業にも再発防止策を注視し続ける必要があります。会見の質疑応答では記者たちが、声を上げる場面がありましたが、彼らの顔が映ることはありません。この状況をフェアじゃないと評するコメントもSNSでは盛り上がりを見せましたが、いまでは芸能界は何事もなかったように、以前と同じようなシステムとメンバーで、番組作りを続けているように見えます」
厳しい言葉である。今回はそんな顔の見えない反論者について取材をした。これはある学校で起きた、保護者説明会での出来事だ。
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森洋美さん(仮名・45歳)は、子どもを地元の小学校に通わせる1人だ。
「うちの地域では、子どもが少なくなっていて、25人2クラスです。6年間ほとんど変わらないメンバーなので、みんなのことをよく知っています。ただ、それが少しネックというか…」。
仲の良し悪しもいわゆるスクールカーストも決まりきっているのだという。
「うちの娘は比較的おとなしい方なんです。だからいつもボス的な女の子にいいようにされていて…。その子は親も地元の名士的な存在で、それこそ PTA会長とかやっちゃうタイプ。どうやったって、勝てないと言いますか。嫌なことは嫌と断るように話していますが、どこまで娘ができているのかはかなり疑問ですね」。
そんな洋美さんの娘がある事件に巻き込まれることになる。
「きっかけは、半年くらい前かな。学校でモノがなくなる事件が多発しているとママ友から聞きました。娘に聞いても娘は口を閉ざすだけ。明らかにおかしいと思い、かなり粘り強く聞いたんです。そうしたら、シャーペンが1本と新しく買ったキャラクターのメモ帳がなくなったというんです」。
ほかのママ友たちとも会えば、その話で持ちきり。聞くところによるとクラスのほとんどの女子が何かしらなくしている状況になっていたという。
「これはきっと誰か、モノを盗る子がいるんだなと思いました。失礼ですが私が真っ先に思い浮かべたのは例のボスの女の子です。むしろ、その子以外に犯人は考えられないと思いました。彼女はとにかくわがままで有名でした。自分の思い通りにならないと癇癪を起こすのが常で、みんなそれが面倒臭いからこそ、言いなりになっているそんな構図だったんです」。
これは洋美さんだけの読みではなかったようで徐々に、犯人は彼女じゃないか…そんな噂が広がっていったという。そして彼女は案外、早く自白をすることになる。
「モノを盗む瞬間を先生に見られてしまったそうなんです。現行犯逮捕ということだったみたいです。なんらかの理由があるんだろうなとは思いましたが、正直私はそんなに興味がありませんでした。うちは私立の中学校への受験を決めていて、準備も進めてきました。あと半年我慢すれば、彼女とはお別れ。そう思えば、蒸し返すのも面倒と言いますか…。先生からは、相手側に何か求めるかと問われたので、娘への謝罪、それからモノを返してもらえればいいと答えました」。
しかし、洋美さんのような意見は少数派だったらしい。説明会を開いて欲しいという声が多数だったというのだ。
「というのも加害者のお母さんからは、LINEで軽い謝罪があっただけだったんです。その対応に批判が集中。人のものを盗んだのなら、直接謝りに来るのが当然だろうと学校に数人のお母さんが乗り込んだみたいで、結局説明会が開かれることになりました。私はすっかり、女の子だけだと思っていたんですが、中には男の子の保護者もいて総勢15人。クラスの半数以上の保護者が集まることになりました」。
まずは校長先生が一言、今回のような事態を招いてしまったことを詫びた。その後、担任が経緯を説明したという。
「会場内はずっとざわついていました。なぜなら、加害者の保護者が出席していなかったから。1人の保護者が声をあげると担任が申し訳なさそうに、体調不良で欠席ですと言いました。そもそも直接謝罪を求めて集まったのに、本人不在では埓が明きません。さらにほんの10分程度で終わってしまったこともあり、会場の空気は最悪でしたね」。
質疑応答に入ったとたん、加害者の保護者が参加しないことに反発する親からヤジが飛んだ。
ー加害者の親からの直接謝罪を求めているんですけど!
「怒号とまではいかないけれど、かなり怒りの気持ちがこもった発言でした。これは雲行きが怪しいと思いましたね」。
【後編】では、保護者説明会で起こった顛末についてさらに詳しく話を聞いていこう。
取材・文/悠木 律