文科省の調査によると近年、教員採用試験の受験者数は減少傾向にあるそうだ。今年度の倍率は過去最低。危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏はこう話す。
「ニュースに取り上げられることも多く、マイナスイメージが強いのも無理はありません。実際、現場の教師たちの疲弊がクローズアップされればされるほど、人気は下がっていくでしょうね。長時間労働が取り上げられることが多いですが、そのほかにも問題は多いと思われます。なかでも保護者との関係に苦労している人は多いようですね」。
昔は「先生」といえば、敬われる立場だったが、今はそのムードは影を潜めている。
「そもそも先生とは学識のある指導的立場にある人を意味する言葉。ベテランであれば、その域に達しているでしょうが、新卒で先生になる人にとっては少々重荷かもしれません。フォローを徹底する、業務を分業とするなど、教育現場にも変革が求められています」。
今回話を聞いたのは、現役の40代教師だ。
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小林梨花さん(仮名・49歳)は現役の小学校教諭だ。その一方で自身も3人の子供を育てる保護者でもある。
「教師と保護者、両方の気持ちがわかるという意味では、理解が深い部分もあるとは思います。ただ、実際はそんなことを考える余裕はありません」。
自分が新卒の頃とは、状況は様変わりしていると話す。
「私が教師になりたての頃は誤解を恐れずに言えば、保護者がもっと親身だった、そんな印象です。おそらくまだ専業主婦が多かったことも大きいでしょうね。お母さんたちに余裕があったと言いますか…。教師としては失格なのかもしれませんが、お母さんたちにたくさん助けていただいた印象です」。
教師と保護者は子どもを育てるチーム、そんなイメージを持っていたと語る。
「何かあれば話し合いをしたり、家庭訪問なんかもまだありましたし。でも今はそんな余裕はありません」。
梨花さん自身、子育てをする保護者でもある。その点では保護者側の気持ちも理解ができる。
「ほとんどの親が働いている状況で、とにかく忙しい。提出物や持ち物を揃えるので精一杯という気持ちは重々理解できます。何かあってもよほどのことでなければ、学校側と相談をしようとは私も思わない、というか思えません」。
それゆえか、一部のモンペだけが際立つ構図だと感じるそう。
「モンペというと学校に殴り込みにきたり、罵詈雑言を吐かれるイメージでしょうけど、私が出会ってきたのはもっといやらしいというか、狡猾というか…。一見いい母親風なんですが、無理難題をお願いしてくるんです」。
友人の教師や保育士ともよくこの話題になると話す。
「そこまで学校や保育園がやらなきゃならないの?みたいなことを平気でお願いしてくるんですよね。丁寧に言われてしまうこともあり、めちゃくちゃ断りづらい…。ちょっと普通の常識じゃ考えられません」。
席替えでは陽に当たりたくないから廊下側の席にして欲しい、食の好みがデリケートだから給食のときは配慮をして欲しい、〇〇くんとは折り合いが悪いから、必ず違う班にして欲しい…こんなお願いを当たり前のようにしてくるらしい。