あるメンタルクリニックによると「非常に感受性が強く敏感な気質をもった人」のことをHSPと呼ぶ。HSPは「Highly Sensitive Person」の略語だ。「HSP=繊細な人」というイメージを持つ人も多いだろう。HSPは病気ではなく、あくまで「心の特徴」だという。
ひと口にHSPと言ってもさまざまだが、場の空気や人の気持ちを読みすぎる、光・音・味などに異様に敏感、共感力が高すぎる、自己肯定感が低い、疲れやすく集中力が低下しやすい、などの特徴があるといい、人口の5人に1人がHSP気質を持つとする説もある。
HSP気質の人と職場をともにする際の課題について、危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏はこう話す。
「HSPは病気ではないため、なかなか理解を得にくいことが多いと言われています。傷つきやすく繊細とされるHSPの方に対するコミュニケーションの取り方は、想像以上に難しい場合もあるようです。
この気質を持つご本人はもとより、周囲の負担を軽減するためにも、専門家による診断が提出できたり、職場での対応マニュアルが整備されたりすると良いのかもしれませんね」
・・・・・・・・・・
今回職場の後輩とのトラブルについて話を聞かせてくれたのは、二条麻里子さん(仮名)。衣料品や家電、本などまで買える総合スーパーマーケットに勤務しているパート従業員だ。
「今年大学に入った上の子が保育園の頃から、お世話になっている職場です。私は生活雑貨・インテリアの売り場でパートリーダーをしています」
このスーパーに長く貢献してきた麻里子さんは、正社員や課長からの信頼も厚いようだ。しかし、最近になってある後輩のことでその信頼が揺らいだように感じているという。今、転職を検討中だ。
「この春、何人かの新人パートとバイトが入社してきました。私は後輩に業務を教えることには慣れているつもりだったのですが、新人のパートさんのうちの1人が苦手で、もうほとほと疲れてしまいました」
麻里子さんは、これまでにも性格のキツい人、同僚や上司の悪口を言いふらす人、協調性に欠ける人、何度注意しても接客態度が直らない人、文化や考え方が違う外国人留学生など、さまざまな後輩と関わってきた。ちょっとやそっとのことでは戸惑わなくなっているつもりだったという。
「今回入ってきたその人は、初めてのタイプでした。初日にいきなり『私はHSPなので、ご迷惑をかけるかもしれない』と話してきたんですが……。いい年して本当に恥ずかしいんですが、私はHSPという言葉すら知りませんでした」
一見人当たりがソフトに見えた新人パートのKさんだったが、ことあるごとにHSPを口にして麻里子さんを悩ませたそうだ。
「初日、私はKさんに対して、HSPについて何も知らないと正直に言いました。『教えていただけますか』と。Kさんは昼休憩の時間を丸ごと使っていろいろ話してくれました。
ただ、聞いてもちょっとわからなかったので『感受性が凄く強いってことでしょうか』と質問したんですが、『それだけではないし、説明してもなかなか理解してもらえないと思う』と返されました」