ビジネスマンがリュックを背負う姿に違和感がなくなって、どのくらい経つだろうか。危機管理コンサルタントの平塚俊樹氏はこう話す。
「すっかり見慣れた光景ですよね。最近では比較的、年齢が上、まさに我々世代の中にもリュック姿で通勤している人を見かけます。正直、私なんかは違和感がゼロとは言えませんが、防災の観点からもリュックの方が安心という意見もあるのかもしれません」。
ここ数日話題になっているのが、車内でのリュックの定位置についてだ。リュックは背中から下ろして前で背負うのが当たり前だったと思っていたが、昨今は違う意見もあるらしい。
「前に持っているリュックに対して、不快感を示す人もいるようです。特に満員電車となるとどこにあっても邪魔になりますよね。網棚の上に〜なんてアナウンスがありますが、防犯面から考えれば、無防備すぎる気もします。これは正解のない、問題でしょうね」。
確かに満員電車のなかは、リュックだけでなく手持ちのビジネスバッグなど、持ち物全般、置き場にも困るものだ。今回はそんな満員電車のなかで、リュックでトラブルになったことがある男性に話を聞いた。
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山田啓介さん(仮名・47歳)は、都内のベンチャー企業で働いている。5年ほど前から通勤にはリュックを活用していると話す。
「正直、初めは落ち着きませんでしたね。でも今はもうリュック以外は考えられません。両手があきますし、本当に便利。片手で持つビジネスバッグより、身動きも楽ですね」。
しかしリュックには当初、家族から強く反対されたと話す。
「特に高校生の長女が難色を示しました。ダサいって。確かに初めに使っていたリュックは、今思えば、登山感が否めないデザインだったんです。それになんというかくたびれていたんですよね。カジュアル着ならまだしも、ジャケパンに合わせると確かにバランスがなんとなくおかしい感じでしたね」。
妻と娘に相談して少しいいブランドのリュックを買ってからは、注意はされなくなったらしい。
「やっぱりリュックならなんでもOKじゃないんですね。買い替えてよかったなと思っています」。
会社の先輩からは「若造り」といじられるそうだが、ラクさとは引き換えにできない。
「荷物がたくさんあっても余裕ですね。ただ、満員電車には向いていないと感じます。結構しっかりとした生地感なので、クシャっとならないんですよ。前に背負いますが、場所をとって申し訳ない気持ちになります」。
実際にトラブルになりかけたこともあるそうだ。