「番組開始予定時刻の5時になっても、もちろんテレビでは地震の緊急特番を放送していました。当たり前だと思うのですが、夫は5時になっても番組が切り替わらないことを確認すると、舌打ちしたんです。ゾッとしました」
自分が一番かわいい、それが人間の本心だということは佐緒里さんも承知している。しかし、起きたばかりの災害でたった今恐怖に震えている人がいるなかで、バラエティ番組の放送があるかどうかにしか関心がない夫が怖かった。
「夫は『6時になったら1時間遅れで放送開始もあるかも』と言い出し、テレビの前に座って画面を凝視しながら放送開始を待ち始めました。
私は『今日はないと思うし、望むべきじゃない』と言ったんですが、夫は『オレらがテレビを楽しまなければ被災地が元に戻るってわけでもないじゃん』と……。そういう問題なんでしょうか」
6時になっても番組は始まらない。苛立った夫は、SNSで番組がどうなるのかを調べ続けた。
「その姿が醜く見えて、何だか心の底から失望してしまいました。正直といえば正直ですが、正直なら何でもいいわけではないので」
挙げ句の果てに、夫は状況を知ろうとテレビ局に電話をかけたという。
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