「学校で模擬試験を実施するとなると、塾や予備校などは、問題を発送してきて、解答用紙を回収してその採点したものや結果を返送してくるだけです。つまり、それ以外の業務はすべて教員がすることになるんですよ!」
少し語気を強めてそう話すのは、関西圏にある県立高校で英語を教えている真由美さん(仮名・28歳)だ。
「申し込みの手続きも、受験料を集めるのも教員で、もし申込手続きで受験者側にミスがあったら、責任を取るのは学校側です。学校にもよるかもしれませんけど、ルーズな生徒というのが必ずどの学年にも1人か2人はいるんですよ。
申込期間を過ぎてから『模試を受けたい』と言い出したり、申し込んで受験したのに、なかなかその受験料を持ってこなかったりして、その対応が面倒だし手間がかかるし……」
真由美さんの愚痴は、ため息とともに続く。
「当然ですが、模試を主催している塾や予備校側には、決まった日に受験者全員分の受験料をお支払いしないといけません。最悪の場合は、なかなか受験料を持ってこない生徒の分を教員が立て替えて払っておくというのが、今私のいる学校で起きている現状です」
彼女の話によると、申し込みや支払いといった手続き以外にも、試験監督や生徒に対する対応も全て教員が行っており、そこへの負担をかなり感じているそうだ。
例えば模擬試験実施日には、受験生への配慮から、始業時間や就業時間を知らせるチャイムを切るという業務がある。
もし高校3年生しか模擬試験を受験していない場合は、それ以外の学年に「チャイムを切っている」ことを知らせなければならないし、そのことによる混乱が起きないかどうか注意を払い続けなければいけない。
また同様の状況下において、受験している学年以外の生徒たちが通常授業や休憩時間中に騒げば、受験生徒たちが「うるさくて模試に集中できない」と怒り出すこともある。
それらの細々とした事案に対する対応を、全て教員が行わなければならないし、多くの学校では「模擬試験担当」と定められた1~2名の教員がそれらの全てを担っているのだ。
「受験するのが高校生であり生徒だという前提があるからかもしれませんが、受験者の自己責任の部分が共有されず、学校側に責任転嫁されることが多いように思います。
騒音で模試に集中できないなんてクレームも、いちいち対応すべきなのかなあとは思いますし、申込期間が終わってから『模試を受けたい』なんていう生徒には、『申込期間が終わっているからもう受験は不可能です』と返せばいいだけだと思うのですが……。
一応教育活動の一環で模試を行っている以上、『指導した上で、模試は受けさせる』というのが学校としての正しい対応だというように言われています」
真由美さんは、再びため息をついた。
教員への負担が重い模擬試験。イレギュラー対応の他にも、土日出勤やICT化への苦悩から、模擬試験の意義にまで疑問を感じている教員にも話を聞くことが出来た。
【後編】へ続く
取材/文 八幡那由多