その場凌ぎの補修をしてなんとか責任を逃れることもできるということになる。岩山さんは言う。
「だからベルヴィ香椎六番館はすごいんですよ。佐々木さんを代表する皆さんの執念というか、諦めない気持ちのたまものでしょう」。
とことん調べ尽くす
佐々木さんが欠陥に対して、本格的に動き出したのは、2度目に理事長になった2016年だ。
「それまでにも1度、2002年に理事長の職につきました。理事長は輪番制なので、次にまわってきたのが2016年ということです。6月の定期総会で六番館および全体の理事長に就任しました。六番館の理事長職引き継ぎの際に、六番館の経費で行った1階のある補修手続きに不備が発覚しました。1階にある2部屋の玄関ドアの開閉不具合に対す補修です。その追認決議を取るために、臨時棟総会を開くことになったんです」。
ある意味で長い道のりのスタートとなった六番館の総会だ。
「実はこの2部屋は築2年ですでに玄関ドアを交換していたんです。後で分かったことですが、ドアを交換した部屋はほかにも3部屋ありました。築2年で5部屋がドアを交換しないといけないマンションなんて異常ですよね。私も知っていれば、交換してもらっていましたよ」。
総会ではさまざまな意見が出たという。
「なぜ、その2部屋だけ修繕がするのか!と多くの住人から意見が出ました。確かに気持ちはわからないでもありません。結局、長期修繕計画に3年後の玄関ドア交換が含まれていたので、それを前倒ししてまずは調査を行うことで落ち着きました」
調査して何もなかったらどうしよう。その懸念は逆の方に払拭された。
業者に調査を依頼すると驚くべき結果が出る。
「全体的に三方枠が変形しているため、ドア交換ができないというんです。特に私が住んでいる11号室の縦のラインでの不具合がひどいこともわかりました。
後日、その結果を踏まえ、報告会を開きました。そこで出たのが“このマンションは傾いているのではないか”という疑念。皆さんと協議をして、管理費のなかから17,18万円を捻出して、管理会社に調査を依頼することにしたんです」。
会議のなかで、住人に測量士がいることがわかり、休日返上で佐々木さんは彼とともに調査をすることになった。