まりこは、ほとんど働くことなく専業主婦として生きてきたことへの後悔や、亭主関白の夫との間に育つ息子の未来の心配、そして、これからどうやって生きていくかなど、夫にも話したことがないようなことを自然と話していたという。
「彼は否定するでも肯定するでもなく、話を聞いてくれました。それもすごく心地良かった。お互いに、誰にも言えずに抱えていた胸のつかえみたいなものが取れる感覚があったんだと思います。2人で、話しすぎちゃいましたねと笑い合いました」
ちょうどカットが終わり、まりこは改めて自分を見て息を呑んだ。鏡に映っているのが自分だとは思えなかったという。
「生まれて初めてショートヘアにしたんです。びっくりしました。自分で言うのもあれですがすごく似合っていて。髪型でこんなに変わるんだと大満足して帰宅しました」
ショーウィンドウや電車の窓に映る自分を見て、まりこはワクワクした。いつもより自分に自信がもてるような気すらしたという。
しかし、気持ち良く帰宅したまりこを見た夫は一言、こう言ったのだ。
ー何だ、その男みたいな髪の毛は。
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