しかし、‘97年にヒットの鉄則・軽快さを身にまとった、『1/3の純情な感情』をリリース。テレビアニメ『るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-』のエンディングテーマに起用されたこともありヒットチャートに登場。
「僕にとっては、あれはロックじゃないんです。でも、あの曲を聞いた大物ミュージシャンが、“久しぶりに本格的なロックを聞いた”と言ってくれたんです。そのとき、わかる人には届くんだなと思いました。だからあの曲で僕たちを知って、ライブに来てくれたお客さんは、引いちゃうんですよ。ライブはゴリゴリのロックですから(笑)」
メジャーデビューしてよかったことは、多くの人が真剣に自分たちの音楽を考えてくれて、惜しみなく力をかけてくれること。
「データを分析し組織で動くことがわかりました。最初は巨象のように歩みは遅いですが、走り出すと猛烈なスピードが出る。テレビや雑誌、ラジオなどのメディアに出るとファンのすそ野は拡大。レコーディング、ライブ、楽曲制作、リハーサルに追われ、息をつく暇もありませんでした」
当時はバンド雑誌の全盛期。『rockin'on』『宝島』『WHAT's IN?』『GiGS』『PATi・PATi』『BANDやろうぜ』などの雑誌が百花繚乱だった。
「1日に20誌近くのインタビューを受けたこともあるんですよ」
当時の芸能界は、ブラックそのもの。昼夜問わず仕事が入り、今が何月何日なのかもわからない生活だったという。
「スケジュールは絶対に空けられない。高熱が出てもライブ会場にいましたし、過労から肝炎で倒れて、点滴をしてからテレビ出演をしたこともありました。それに抗生物質の副作用で寝たきりになったことも」
ヒットしたアーティストを、徹底的に消費していくという当時の音楽業界の凄絶さがわかる。それを飲み込んで耐え抜いた者のみが、生き残れるという世界。
「それでもアーティストの手元にお金はあまり入らないという話も聞きました。それが芸能界であり、音楽業界でした。アーティストは音楽がやりたくてこの世界に入っている。
ですから、契約書なんてろくに読みませんし、読んだところで専門知識もありません。ネットもないので、法律の専門家に精査してもらうこともできませんしね」
デビューしたい人はたくさんいる。異議を申し立てたら別の人がデビューするまでだ。