「ケント君、お疲れ様。今後のことを話したいんだけど」という呼びかけに振り向くと、ヨシオ氏がカードキーを渡してきたという。会場がホテルの大広間だったため、高層階には宿泊施設がある。彼はその一室を予約していたのだ。
「一瞬、後ずさったのですが、彼は僕にカードキーを握らせたまま、招待客の挨拶に行ってしまって……困惑していると、事務所のマネージャーが『お疲れ様』と近寄ってきたんです。
ヘアーショーには同じ事務所から2名の女性モデルも出演していたので、ヨシオ氏への挨拶も兼ねて見に来てくれたんです」
カードキーの件を伝えようとすると、マネージャーはヨシオ氏を追いかけ、以下のように礼を述べたという。
『今日はお疲れさまでした。ヨシオ先生の新製品のイメージガールにうちのタレントを起用してくださりありがとうございます』
その時わかったことだが、同じ事務所の女性タレントが、ヨシオ氏がプロデュースする商品のCMに起用されたという。マネージャーは感謝の言葉を述べ立てた。
「その時悟りました。カードキーの件はマネージャーに知らせちゃいけない。ヨシオ氏の機嫌を損ねてはいけないと……」
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