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世間にあぐらをかきすぎ? 校長先生の年金問題と「うますぎる転職先」のグレーすぎるカラクリ

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「校長の定年は60歳、年金受給開始は65歳」という年金問題が、いま教職界で議論を集めている。法改正がなされ、段階的に教員の定年退職年齢が毎年1年引き上げられていくのだが、定年から年金受給までの空白の5年間に振り回され、性格や性質まで変わってしまう人もいるらしい。

今回は、ある一地方都市の校長経験者やその周辺人物から話を聞いたが、どうやら各都道府県によって状況は違うらしい。

「他の都道府県のことはわかりませんが、私が勤務している県は比較的教員というものが尊敬されるというか大切にされている県で、教員側もそのことにあぐらをかいてしまっているような、そんな印象です。

もちろん、すべての先生方があぐらをかいているわけではありませんが、『○○高校の校長先生ですって、すごいわねー。』なんていう、何がすごいのかよくわからない褒められ方をするのが当たり前みたいな感じです」

そう話すのは、教員歴15年、43歳の千夏さん(仮名)だ。彼女は定年後のことばかり気にしながら業務を行ってしまう定年直前校長に煩わされた経験を持つ。

「定年後に、教員以外の仕事を県から回してもらおうと考えている場合は、とにかく問題を起こしてはいけないらしいですよ。校長として勤めている間にその勤務校で何か問題があったり、本人が問題を起こしてしまったりすると、定年後は県からお声がかからないというような表現を耳にしたことがあります。

その言葉を聞いたときはまだ教員になりたてだったので、どういう意味なのか全くわかりませんでしたけど、もし県の教育委員会から何も声をかけてもらえなかったら退職してから年金を受給できるまでの5年間は稼ぎゼロってことになるそうです。

まあ、自分でパートとか探して全く別の世界で働くとかすればいいのに・・・とは思いますよね。でも、『かつて校長だった人が恥ずかしくないように次の職場をご案内します。』みたいな、県の教育委員会自体がそんな感じだとか聞きました」

そう言って肩をすくめる千夏さんは、企業勤務の経験がある。営業部でバリバリ働いていた彼女にとっては、未だに教員という職業を理解できないことがあるようだ。

「企業勤務から教職へと転職したときに、田舎だからなのかもしれませんけど、生徒でも何でもない近所の方々にまで『先生』と呼ばれることに面食らいました。

ここも田舎だからでしょうけど、町中で生徒や保護者の方に会うことも多くて、日常生活でも先生でいないといけないなんて、なんて息苦しいのかと驚きました。でも、それと同時に、勘違いをしてはいけないなとも思っています。」と千夏さんが言うのには理由がある。彼女の職場にはどこに行っても「先生」であることをやめられない、社会人としてはやや問題のあるタイプの人がたくさんいたのだ。

そんなどこにいても『先生』扱いされることになれてしまった人間は、確かに他の仕事に就くことは難しいだろう。

「自覚はあるみたいですよ。私の知っている校長は、『今更イチ教員に戻ったり、平社員として働いたりすることなんかできるはずない』っておっしゃっていましたからね」

そういった公立高校の校長たちの受け皿となるのはまずは、私立高校だ。私立高校には独自のルールがあり、定年後の校長でも、イチ非常勤講師として迎え入れられる。
でも・・・というのが校長たちの言い分だそうだ。

「しばらくの間上に立って先生たちの指導をしていた自分が、もう一度その指導されるような立場に戻ることを『落ちぶれた』とか思ってしまうのですって。あと、もしその私立高校に校長時代の自分を知っている人がいて、『今までとても偉そうだったのに、あんな授業しかできないんだー。』とか『生徒の心をつかめって言ってたくせに自分は、全然生徒の心つかめてないわね。』とか言われるのが怖いというところもあるでしょうね。本当に甘ったれていると思いませんか?60にもなろうって言う大人が、何を考えているのって何度も口にしそうになりました。ま、言っても通じなさそうなので、言いませんでしたけど」


そう話す千夏さんの笑いは乾いている。彼女をかつて煩わせた校長は、そういった様々な思惑から、定年後の進路として別のものに狙いを定めていた。

千夏さんを煩わせた校長が、定年後のポストとして狙っていたのは「美術館の館長」だった。

「もともと自分は西洋美術がとても好きで、造詣もかなり深いみたいなどうでもいい話をされて、だからその夢が叶うように、どうか穏便に退職させてくれよって言われました。ふざけんなと思いました」

思いだすだけで腹が立つのだろう。千夏さんの顔は怒りでゆがんでいる。

「今は、美術館の館長よりも、もっといい再就職先があるらしいですよ」

そう言って笑うのは雄二さん(仮名)63歳だ。彼はもともと周囲に後押しされて校長になっただけで、もともとは生徒と授業が大好きな教員だった。だから定年後は迷わず私立高校の非常勤講師を選び、楽しい定年生活を送っている。

「給与は確かに校長時代よりは下がりましたけど、別にそれでも生きていけるので、私は今の仕事を続けたいと考えていますが、私の同級生で校長経験のある人たちが『おいしすぎる最高の職場』と言っているのは大学の広報という職です」

雄二さんによると、公立高校の校長を退職した後の職業として今、大学の広報と言う職業に注目が集まっているのだそうだ。

「大学側としては、もともと校長だった人に広報になっていただけると、生徒募集がしやすいのです。学校の状況を把握している元校長が、自分の今いる大学の受験生を増やすようにと学校に要請できるのだから、それはもはや広報と言うよりも『要求』ですよね。元校長の方に広報になっていただいてから、いろいろな高校で広報活動をさせていただきやすくなりました。今までは門前払いをうちに食らわせてきた進学校なんかも、元校長が来校して、自分の今いる学校の良さを語るわけですから、さすがに門前払いはできない。元校長の広報というのは、大学にとってはかなりありがたい存在になりつつあります」

元校長が大学の広報へ。これは癒着とみられても仕方ないような、とてもグレーな問題だろう。次回では、さらに校長の置かれている優越的立場を様々な証言をもとに検証していく。

取材・文 教育ジャーナリスト 八幡那由多

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