ハンバーガーメニューボタン
FORZA STYLE - 粋なダンナのLuxuaryWebMagazine
LIFESTYLE 女たちの事件簿

問題のある人しか応募してこない。部活の外部指導員が「所詮は外部」と蔑まれる、想像を超える現状。

無料会員をしていただくと、
記事をクリップできます

新規会員登録
不倫や浮気、DVにプチ風俗……。妻として、母として、ひとりの女性として社会生活を営み、穏やかに微笑んでいる彼女たちが密かに抱えている秘密とは? 夫やパートナーはもちろん、ごく近しい知人のみしか知らない、女たちの「裏の顔」をリサーチ。ほら、いまあなたの隣にいる女性も、もしかしたら……。

教員が「どんなブラック企業よりもブラックだ」と言われる理由の1つに、部活指導がある。

担任業務や生活指導、教科指導に加え、部活指導まで含まれてくると、平日は夜8時まで、休日は全く無し……なんて先生がいるのも事実。

そこで、改善策として2017年頃に「部活指導員」や「外部指導員」に部活の指導を任せようという制度が生まれた。

部活指導員というのは、「学校の教育計画に基づき、(中略)部活動において、校長の監督を受け、技術的な指導に従事する(学校教育法施行規則の一部を改正する省令の施行について 2017年3月14日)」という立場の人のこと。

外部指導員がボランティア的な役割であるのに対し、部活指導員は学校の職員として採用され、給与が支給される。また引率や部活動の会計を管理する権限も有するのだそう。その代わり責任も教員と同等のものを背負うことになり、各都道府県教育委員会が定めた研修を受ける必要も生じるのだ。

・・・・・・・・・・・・・・・

「なかなか、なりたがる人がいないんですよ。部活指導員」

そうこぼすのは、関西の公立高校に勤務している美咲さん(仮名・32歳)だ。
彼女は学生時代から取り組んできたバレーボール部の顧問をしている。

高校2年生の40人クラスを担任しながら英語の教科指導を行い、さらに進路指導部に所属し、子どもたちの進路確保のために日々予備校や各大学と話し合うという業務もしている。そこに加えてさらに部活指導もしているのだ。

「辛くないと言えばウソになります。というか、時間が足りないんです。担任しているクラスの生徒とももっと向き合いたいし、教科指導のための研究もしたい。進路指導部として、新しくなった大学入試の制度や中身についても学びたい。でも、部活も近畿大会で優勝できるレベルまでもっていってやりたい。そうなってくると、24時間あっても全部はどうしてもこなせない。もしくは、私の身体が1人じゃ足りない。どの仕事も必死でこなしているのに、どれも中途半端な感じがして、フラストレーションがたまる状況が続きました」

©Getty Images

深くため息をつく美咲さんは、「部活指導員」の制度を知って、ぜひとも取り入れたいと思ったそうだ。学校長に相談し、是非と話をすすめたが……。

「普通に考えて、健康的な若者が部活指導員に応募してくるはずがありませんよね。だって、部活指導員は基本的に、勤務日数は週3日程度。給与もそんなに多いわけじゃないので、いわゆる『本業』にはならない。定年後の方や、自由業の方が応募してらしたんですけど、ご自身は身体を動かさずに口答でだけしか指導しないと仰ったり、時間にルーズで遊びの延長みたいな感じでいらっしゃる方が多くて、お断りしてもらいました」

「他人に任せようとしているくせに、偉そうだなとは自分でも思いましたけど、私にとっては大切な部員たち。彼らをどんな人にでもお任せしますなんて気持ちにはなれなくて……結局部活指導員の方に来ていただくという話はなくなってしまいました」

美咲さんのように、誰かには手伝ってほしいけれど、誰でもいいわけじゃないという先生は多い。

しかし、部活指導員にもまた、言い分があるのだという。

「部活指導員を中に入れたからには、こちらを信頼してほしいし、きちんと連携をとることができるようにしてほしいですよね」

そう話すのは、もう2年ほど部活指導員をしている律子さん(仮名・24歳)。彼女はバレエダンサーとしていくつかの舞台に立ち、バレエ教室の講師などをしながら、関西にある私立高校の新体操部部活指導員になった。しかし周囲の先生の理解のなさに、行き詰まることも多いのだとか。

また部活指導員を導入して、大きなトラブルになった例もあるそうだ。

「うちは元Jリーガーの方に部活指導員として来ていただきました。生徒たちや保護者の受けもよくて、土日と平日1日は必ずその方に見ていただいて、その方がいらっしゃらない時は、その方が組んでくださった練習メニューを子どもたちに提示して、やってもらっていました。私自身も学生時代はサッカー部だったんですけど、ただサッカーをしていただけの普通のサッカー好きですからねえ。私なんかに指導してもらうよりは、断然いいだろうと思いましたよ」

そう言って笑うのは、都内の公立高校に勤める健司さん(仮名・40歳)。健司さんが喜んでいた部活指導員の存在は、のちに学校全体を巻き込む大問題となった。

「上手くいくと思ったのですが……。こんなことになるなんてと頭を抱えましたよ」

健司さんは当時を振り返ってそう言った。

一体、律子さんや健司さんの周りではどんなことが起きたのだろうか。両者それぞれの立場から、「部活指導員」を巡ったトラブルについて聞くことができた。

取材・文/八幡那由多

後編に続く

▶︎後編に続く


RANKING

1
2
3
4
5
1
2
3
4
5