「そこを確認せずに結婚したのは、僕の落ち度です。ただ、結婚前にいろいろ話す中で、僕と妻の給料を合わせれば、どうにか子どもを産んで育てていけそうだねと一緒に試算したわけで、彼女は共働きになることは承知しているものと思っていたんですね。専業主婦希望であれば、それは言ってほしかった」
佐智子は無断で会社を辞めた理由について、亮太が出世して収入が上がることを確信しているからだと言った。
「亮太はきっと出世する。あなたの人柄を見ていればわかると言っていました。新人の教育係を任されて、後輩からも慕われてるとか......。僕はちょっと待ってくれと言いました。新人の教育係なんていくらでもいますからね。なんか彼女の言うことが、自分の退職を正当化するためのこじつけに聞こえて、突っかかったんです。佐智子も正社員を続けてくれないと、子どもは難しいんじゃないの?と」
佐智子は、パートは当面続けていくし、貯金も会社勤めしていた間にかなり貯めたから大丈夫だと言った。亮太はそれに押し切られるかたちで、不安なまま結婚生活を続けることとなる。
「そもそも、嘘をついてでも目的を達成しようとするような人間であることをうっすら見抜いた時点で、勇気を出して離婚すべきだったんですよね。その違和感を放置していた僕にも責任はあります」
そんな亮太をさらに苦しめることになったのが、「子作り問題」だった。精神的に追い詰められ、男性不能に陥った彼を、妻はありえない蔑称をつけて揶揄したという。反面教師として、読み進めてほしい。
取材・文:中小林亜紀
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