「部活指導員の方は平日1日と土日しか指導に来ないので、その雰囲気がどうしてもわからないようで、『こういう困った状態になっているので、指導をしてほしい』とお願いしても、『彼らはそんなことをするような子どもたちじゃありません。俺は彼らを信じていますから』とおっしゃって……なんかねえ。その言い方をされると、こっちが生徒を信じていない悪い大人みたいなそんな感じになりますよねえ?」
健司さんの懸念は当たった。元Jリーガーの部活指導員は、健司さんの言葉をそのまま子どもたちに伝え、
「お前たちはそんなことするような奴らじゃないよな? 俺はサッカープレーヤーとして、お前たちをそんな人間に育てた覚えはない。言ったよな? 人間性がプレーに出るって。わかってくれてるよな?」
と言い放ったのだ
「横で聞いていて、自分に子どもたちの冷たい視線が注がれているのを感じました。あの言葉で、子どもたちが僕や、ひいては学校というものを完全に敵とみなしたのだと思います」
健司さんはそう言ってうなだれた。それ以降、サッカー部員たちの問題行動は続き、試合には勝ち続けているのに多くの教員から祝福されない状況が続いた。子どもたちの間でも、「サッカー部は嫌な奴らだ」と言うような認識は広まり、とにかく近づかないのが一番だというような扱いを受けるようになった。
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