「絵です。あの人、スケッチブックを隠していたんです。いつもは相手の女に預けているか何かなのでしょう。私は見たこともなかったものなのですが、油断していたのか、夫の車に積んであったところを見つけました。あの女を乗せた時に忘れたものかもしれません。というか、あの女、わざと置いていったのかしら」
スケッチブックを開いた祥子さんは絶句した。分厚いノートには、数えきれないほどの女の裸の絵が並んでいたのだ。
「みんな同じ女です。つまり、あのババアなんですよ。ちょっと美人だと思って、老いさらばえてもいい女気取りでヌードモデルになるなんて、頭おかしいと思いません?」
しかも、裸体の絵に混じって、女性器の絵が数点描かれていたのだそう。
「悪趣味ったらないですよね。その女の股の間に居座ってじっくり見ながら描いたのかと思うと、吐き気がします。そのスケッチの横には”LOVE、〇〇ほど美しい女はいない”というおぞましいメッセージが添えられてました。気持ち悪いったらないです。許せない」
度重なる裏切りに悔しくていられなかった祥子さんは、初めて不倫が発覚した9年前を思い出し、迷うことなくこのことを娘に相談したという。
「これは失敗だったのかもしれませんが、実は、娘に相手の女のヌードが描かれたスケッチブックを見せてしまったんです。こんなにひどいことをしてるのよ、というのを伝えたいあまりに......。
一緒になって怒って、夫やあの女をぼろかすに言いたかったんです。でも、それがいけなかったのか、娘は9年前のように私を慰めてはくれませんでした。むしろ凄く冷淡な態度を取られてしまいました。『そんなことなんで娘に相談するのよ、おかしくない?』と」
祥子さんはその反応にショックを受けて、心細くなって泣き出してしまったそうだ。