「中学からは自分のことに忙しかったので、父親の監視をしてる暇はなかったらしいんです。ですが娘が高校3年の時に、夫が妙にこそこそLINEかメールを打っていることにふと気づいたと。それをきっかけに子供の頃の不安がよみがえって、再びパパの素行を気にし始めたようなんですね」
祥子さんの娘は父親のPCの閲覧履歴をチェック。相手の女性の絵画コンクールの受賞結果や、絵画教室の展覧会、勤務先と思しき病院のホームページなどを父親が調べた痕跡を発見した。内容から、相手は前と同じ女性であることを確信したのだという。
「娘は調べるだけでは終わらなかったそうです。相手の女の勤め先である病院に出向いて、話をしたいと申し入れたそうなんです。もうパパと会うのはやめてくれと頼むつもりで行ったそうです」
祥子さんは止まらない涙をハンカチで拭いながら、「その時点では、娘は私の味方だったはずなんです」としゃくり上げながら言った。
泣きじゃくる祥子さんの子供のような顔を見ながら、娘がどんな思いで相手の女に会いに行ったか、どれだけの勇気が必要だったか、その辺りは想像できているのだろうかという疑問がふとよぎる。
「でも、ひどいんです。ミイラ取りがミイラなんです。娘はその女に取り込まれてしまったようで、そこから多分おかしくなったんですね。私の悪口か何かを吹き込まれて、どこでどうなったのか、私を恨むようになって......。ひど過ぎます」
娘は、浮気相手の女性が父親に言い寄っているというよりも、父親の方が彼女を必要としていると感じたようだ。
「娘はこんなふうに言ってました。ママ、2年前にパパが仕事で大きいミスして本社から出向になったって言って怒ってたじゃん。パパはその時、ママにけなされて落ち込んでたんだって。その時にあの人に会いたくなったらしいよ、と」