「駐車場として利用するにしても、実家がある地域の住民は車移動が基本で、自宅に駐車スペースを持つ人ばかりです。駐車料金も安く設定しなければならないでしょうし、思うような収入になるかと言えば、期待はできません」
佐和子さんが大きなため息をついた。駐車場計画には反対らしい。
「駐車場にするにしたって、お金も手間もかかります。そんなの考えただけでうんざりです。固定資産税の負担もあるので、私としてはやはり売却して現金に換えたいです。うちは現金の遺産はあまりありません。放置しておいても一文にもならない空き家のために経費をかけ続けるのは、いかがなものかと思います」
空き家税導入を予定している自治体もありますよね、と合いの手を入れると、佐和子さんは膝を打った。
「そうなんですよ。全国に広まる前に、すぐにでも手放さないと!それに、駐車場経営なんて無理。そのうち私たちも年老いるわけですから、うちの子か利律子の子に管理などを引き継いで負担をかけるのも気が進みません」
利律子さんは土地活用で収益を出していくことにも魅力を感じているようだが、佐和子さんはその計画がうまく行くと思っておらず、そもそも土地の管理が延々と続くことを敬遠している。佐和子さんと利律子さんの意見は必ずしも一致していない様子が窺えた。佐和子さんはすかさずこう続けた。
「とにかく、土地を売ることを前提に考えると、解体費用を準備する必要があります。いま、人手不足や燃料費の高騰などのせいか、解体費が高騰しているらしくて、いくらかかるのか想像するだけで胃が痛いです」
後で調べてみたが、確かに解体費は人材不足や産業廃棄物の処理費用の上昇によって高騰しているらしい。土地活用するにも売却するにも負担がのしかかってくるというわけだ。また、佐和子さんが実家の売却を急ぐのには他にも理由がある。
「譲渡された空き家を売るのに、税制優遇があるらしいんです。それを知ったのがつい最近で、期限が迫っているので、だから決断を急ぎたいんです」
佐和子さんの話をひとしきり聞いていた妹の利律子さんが、少し不服そうに口を開いた。