一方、北米市場はどうか? こちらはBEVに逆風の部分があり、「域外で生産されたBEVには優遇税制を適用しない」ことを米国政府は決定。欧州・日本・韓国勢のロビー活動もむなしく、今後は価格というハンデを背負うことになります。つまり、現地生産の対応が急がれることに。トヨタの計画がコレに対応するものかわかりませんが、ひょっとしたら前倒し案件となるかもしれません。
個人的にもっとも危惧するのは昨今のドル離れです。OPECの中心となるサウジアラビアは、米国バイデン政権の増産要請を一笑に付し、逆に中国とロシアの訪問を大歓迎。さらに、原油のお会計は米ドルは使わないというウルトラCを両国に約束。中国の橋渡しも手伝ってイランと国交正常化まで実現してしまいました。
ASEAN地域ではインドとマレーシア、インドネシアなどこれまた現地通貨によるトレードの動きが加速。簡単にいうと人民元やルーブル、ルピーで中東の原油が買えてしまうのです。いわゆるBRICs(ブリックス、Brazil, Russia, India, China)に追随する国が新たに加わって、米ドルを決済に使わない一大経済圏が急速に形成されつつあるのです。また、ドル、ポンド、ユーロ、円を排除する動きもあり、もうどちらが経済制裁されているのかわからない状況。追い詰められたのはむしろG7では? と思う次第。
もしもトヨタのプランに想定外の要素が加わるとしたら、それは米ドルの命運だけかもしれません。無論、このことはトヨタ一社にかぎりませんが、さてどうなることやら。フランスでは年金支給年齢の引き上げに300万人規模のデモが行われ、政権さえ揺らぎかねない状況が続いています。物価上昇も増税も忍の一時で静観するわれら日本の庶民たち。いずれにせよ、消費が冷え込むことだけは確かなことかもしれませんね。
Text:Seiichi Norishige