「子作りを迫られすぎてプレッシャーになったのか、実はその頃すでに僕のアレは彼女に対してほとんど機能しなくなっていたんです。そのことで、ベッドの中では大げさにため息をつかれ、恥をかかされたとか、私に魅力がないみたいじゃないかと、罵られるようになりました。そして、そのことを昼間のリビングでも堂々と言うようになったんですね」
亮太は佐智子に対する不信感を強め、このまま関係が悪化するなら、離婚も致し方ないと考えるようになった。しかし、何よりも体裁が大事な佐智子は、言い過ぎて亮太を怒らせた後には、ほんの少し優しい顔を見せて亮太の決意を鈍らせる、という行為をくり返すのだった。
「DVとかモラハラやる奴ってそうですよね。暴力ふるったあと優しくなって、相手はまた情にほだされてしまうという。僕もそれだったのかな。僕は経済観念や価値観が合う人とつき合ったり結婚したいという希望を抱き始め、昔つき合ってた彼女を思い出したり、現実逃避したりするようになりました。すると、妻に対して性欲がなくなり、本格的にEDになってしまったんです。妻は心配するどころか、通院を強要してきました。EDをモジって僕をエドさんとかエドっちとか呼ぶようになったのもこの頃です。名前で呼ばれることはなくなりました」
性的不能になったのは妻に対してだけだが、それを言えば逆鱗に触れることはわかっていたため言えなかったという。しかも、悪いことに、こっそりとアダルトサイトを閲覧していたことを妻に知られてしまった。
「おエド様かと思っていたらいっぱしに性欲高まってんじゃん、と言われました。人の閲覧履歴を調べるなんてひどいと抗議しても、私を傷つけといて逆ギレするのかと言ってきたんです。稼ぎは少なくて妻に専業主婦をさせる甲斐性はないし、肝心な時に勃たなくて知らない女には欲情するのかよ、と。耳を疑うような言葉でした」
亮太はこの頃、私生活の絶不調に反し、会社では比較的大きな契約を取って上司から高い評価を受けた。昇給も決まったという。しかし、妻はそのことは話題にもせず、アダルトサイトに金を使うような奴には小遣いはなし、と言い出した。