少し前に話を聞いた時にはパワハラを不安視していた志保だったが、たった一月ほどの間に、彼女の不安は「夫がカモにされているのではないか」というものに変わっていた。だが、よくよく聞いていくと、彼女の本心はさらにまた別のところにあった。
「会社の後輩女性に高額なプレゼントっておかしいですよね。カモにされているなら、ダンナに早く気づいてほしいんです。一刻も早く」
若い部下にクロエの財布をプレゼントした件も、夫はご丁寧に妻に報告したのだろうか。ふと気になり、訊ねてみる。
「いいえ……あの、これは調べました」
これまでの印象とは異なる歯切れの悪い話し方で、彼女は語り出した。
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