里佳は酒に強く、かなりの量を飲んだ。解散後、心配になって振り返ると、理香は路上にうずくまっていた。仕方がないので紀明さんは介抱する。
「彼女の家を知らないし、ウチに連れて行くわけにもいかない。ビジネスホテルに入り、そこに寝かせました。部屋に入ると里佳は“苦しい”と服を脱ぎ、僕に抱きついてきた」
おそらく、酔ったふりをしていたのだろう。30代半ばの紀明さんは男の色気がある。妻はバリバリのキャリアウーマンだ。この世には一定数の「人のもちものが欲しくなる女」がいる。話を聞く限り、里佳はそういうタイプだ。後輩に紀明さんを誘わせたのも、里佳の策略だろう。
「まさにそうです。今思えば、里佳の目的は僕ではなく、僕と妻の関係を壊すこと。そして理想の女性と言われている妻の自尊心を傷つけることだった」
紀明さんは健康的な男性だ。妻と数年間体を重ねていないところに、27歳の女性に下着姿で抱きつかれたらひとたまりもないだろう。
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