とんとん拍子に話は進み、社宅への引っ越しを済ませた2人。
しかし、理菜は同棲準備の中で少し裕也に疑問を感じていた。
ことあるごとに自分が支払うよう裕也に促されるのだ。最初は大型テレビが欲しいと言われ、新生活に浮足立つ理菜も賛成した。しかし裕也からとりあえず理菜が支払って欲しいと言われ、なんで私がと思いつつも、初めての同棲に水をさしてはいけないと理菜は渋々支払ったのだった。しかしそれだけでは終わらず、さりげない理菜の出費は、同棲生活の中で日常的になっていった。
そんな同棲生活もしばらく経ったある夜、裕也から車で迎えに来て欲しいと連絡が来た理菜は、繁華街の飲み屋に車を走らせた。お店に着くと、理菜が目にしたのは泥酔状態の裕也だった。
楽しげに店を後にした裕也は助手席に乗り込むと、グタッとシートを倒した。理菜は、裕也の会社の同僚に挨拶し、ため息をついて車を発車させた。
しばらく人気のない国道を走っていると、突然、目を閉じてぐったりしていた裕也が起き上がり、横からハンドルを取った。「そこのコンビニに入れ!」と強い口調で言い放つと同時に、ハンドルを切る。 恐怖を感じた理菜は「危ない! やめて!」と言ったが、裕也はかまわず「いいから、コンビニに入れって言ってんだよ!」と、さらに駐車場の方向にハンドルを切った。ドゴッ!
背骨に響き渡る鈍い音と衝撃。一瞬で全身の血の気が引いていくのが、理菜にはわかった。
サイドミラーの死角に、バイクがいたのだ。車のスピードは徐行レベルだったが、完全にこちらの不注意で起こった事故だった。理菜は破裂しそうな心臓の鼓動を耳の中に聞きながら、バイクに駆け寄った。
☆バイクとの人身事故を起こした理菜は、彼氏のクズっぷりをさらに痛感させられることになる。次回ではさらに詳細に悲劇の一夜の成り行きをレポートする☆
ライター 西条嵐子