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「男性なら1人前、女性なら2人前分」表現で炎上!? 謝罪する、しないはどこで見極めるべき?

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講演、メディア出演、執筆などを通じて、炎上の「火消し」からフェイクニュース対策まで幅広く発信している小木曽健氏によるネットニュース分析、推察コラム。

二郎の小ラーメンに真理を見た

ラーメン二郎、二郎系ラーメンの特徴の1つに「量の多さ」があります。好き嫌いもある界隈ですから、二郎に行かれない方には「知らんがな」だと思いますが、多いんですよ、量が。意味わかんないくらい多い。そこで「小ラーメン」の登場です。いいですねぇ小サイズは。味はそのまま、適度な満足度って思うでしょ?多いんですよ、量が。ある支店では「当店の小ラーメンは一般的なラーメンの2.5倍ほどです」って、ちょっと何言ってるか分かんない。「小」の概念とは???と嗚咽しながら完食しました。

SNSやテレビで活躍されている料理研究家の「だれウマ」さんが、この概念で謎の地雷を踏みしめ、「一部の変わった人たち」からぶん殴られて謝罪したそうです。なんともお気の毒な。内容的に、これもう完全にネットの当たり屋だよねっていう案件でして……経緯はこうです。

先週、いつものようにTwitterにレシピを投稿した際、

「男性なら1人前、女性なら2人前分あります」

と書き添えたところ、一部のフォロワー(?)から「男女で分けるな」「女性だってたくさん食べる」「性差で決めつけるなんて」という猛烈な批判が。うーん、凄いね。そんなのガン無視でOKでしょう。ところがご本人が丁寧に対応され、「不適切な発言だった」と謝罪。その時点で「ネット炎上」が成立しました。だってご本人が謝罪されてますから。見事、攻撃した側の勝利です。

そもそも「1人分」や「1人前」なんていう表現自体、個人の感覚に委ねられた概念です。曖昧で個人差もあり、年齢、育った環境、経験、体格によっても異なる、性差以前のブレブレ概念。目の前のごはんを眺めて「男性なら1人前、女性なら2人前だな」だと感じるのも、そう表現するのは個人の自由です。自分の感覚を自由に伝える。当たり前ですよね。

一方でその表現を不適切だと感じるのも自由。その尊いお気持ちをTwitterで主張したり、当人に伝えるのも自由でしょう。感性が違うんだから仕方ない。お互い「気が合わないね」で終わらせれば良いし、何なら袂を分かつなりすれば良いだけ。こういうのは分断とは言いません。我々は統一規格のロボットではないので、人それぞれ感覚の違いがあって当然なのです。

「非実在型」&「自爆型」の炎上でした

でも「不適切でした」って謝っちゃうと、ご本人は今後、その表現が二度と使えなくなります。そして世の中、私みたいに「くだらねえな、そんなの無視無視」って声を上げる人ばかりではないので、一連のやりとりを見た「まともな人たち」が、

「こんなもんに言いがかり付ける当たり屋がいるのか、なんか面倒くさいな……」

と自由な表現を控えるようになる。言うなれば表現の自由の「自殺」ですね。こんな極端でミクロなお気持ちにまで配慮し始めたら、あっという間に「何も言えない世界」がやってくるでしょう。だって攻撃者側の論法に従えば、「女性に優しい」とか「女性をターゲットに」みたいな表現が全部アウトになりますからね。さすがにおかしいでしょ。

もちろん攻撃した彼ら自身も自分の首を絞めることになります。だって自分がいつ「攻撃される側」になるか分かりませんから(他人の表現を攻撃する人たちって、不思議と「自分はちゃんとしているから大丈夫」という謎の自信に満ちているんですが、それ、ただの錯覚ですよ)。

振り返ればこの案件、完全に「非実在型」&「自爆型」のネット炎上でした。ネットにはマイナーで極端な意見も「声がデカい人達」が騒ぐことで炎上しているように見えてしまう(=非実在型。実際は炎上していない)特性があり、また必要のない謝罪によって炎上を成立させてしまった(=自爆型。謝ることで相手の主張を認め、同時に注目も集める)、企業がよく陥る炎上対応の失敗パターンだったのです。

もちろん「だれウマ」さんも良かれと思って対応したと思うし、誠実に対処すれば相手とも対話できるかも、という一縷の望みもあったと思います。でも相手が悪かった。次からは「面白い人たちだなあ、わはは」と笑うだけで良いと思います。私も一緒に指さして爆笑します。

それでは、性懲りもなく二郎系の小ラーメンを食べてきますね(嗚咽しながら)。

 

Text:小木曽健(国際大学GLOCOM客員研究員)
※本記事のタイトルはFORZA STYLE編集部によるものです。



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