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ラーメン店を「廃業」に追い込んだ Googleマップの「クチコミ機能」が大変なことになっていた!

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講演、メディア出演、執筆などを通じて、炎上の「火消し」からフェイクニュース対策まで幅広く発信している小木曽健氏によるネットニュース分析、推察コラム。

店主の心を折ったGoogleマップ

先日ネットで、あるラーメン店が廃業したという記事が話題になったんですが、店を閉めた理由の一つが「Googleマップに書き込まれる辛辣なレビュー」への対応と、それによるストレスとのこと。もう何だかね。


Googleマップって、いつの間にか、情報の追記やクチコミの投稿ができるサービスになりましたよね。とにかく何でも書ける。例えば安倍さん殺害事件の現場にほど近い「山上八幡神社」のクチコミ、特に事件後に投稿されたモノなんて、その多くが「神社と関係ねーだろ」という内容なんですよ。みなさん本当に自由です。2015年には、Googleマップへの書き込み(改ざん)が業務妨害とみなされ、3名が書類送検されています。事件化するほど好き放題やれちゃうGoogleマップ。そんなフリーダムな世界に「クチコミ機能」が実装されれば、もうメチャクチャになるのも当然でしょう。


もちろん全体で見れば、ちゃんとした投稿もたくさんあります。むしろそっちの方が多い。でもネガティブな情報は目を引きやすく、やられた側の精神もエグられるもの。そもそも味覚なんて個人の好みだし、クセ強で有名な「天下一品」や「二郎系」ラーメンだって、好きな人にはたまらない、でも合わない人には苦手な味でしょう。実は先日、「〇〇県民のソウルフード」と呼ばれる大絶賛ラーメンを食べたんですが、雑巾の味がしました。行列するほど大人気なんですけどね。なんとか頑張って翌日にもチャレンジしたんですが、結局雑巾を2枚食べた思い出しか残らなかった。味覚の大半は「好き」「嫌い」の世界なのです。

犬と猫、どっちがカワイイ?

でも世の中には「好き」「嫌い」を、真顔で「正しい」「間違い」にすり替えてしまう人がいます。特にグルメ系で辛辣レビューを連発しちゃう方って、「もしや、味覚界の最高指導者かな?」って思うくらい、ご自身の好みを「正しさ」で語っていたりする。恐らくご本人にはその自覚すら無いと思いますが、でもそれ、アナタの好みであって「犬より猫の方がカワイイのだ。なぜなら!」と鼻膨らましながらまくし立てるのと一緒なんです。

たかがレビューと思われるかもしれませんが、これは今後、私たちが直面する「多様性のある社会」に大いに関係してくる話です。以前も書きましたが、多様性のある社会とは「我慢しあう社会」です。互いの違いを認め、気に入らなくても苦手でも、その存在だけは認めてヤセ我慢する、ハードボイルドな世界。味の好みなんて、そんな多様性「以前」の基本の「き」なのに、こんなところでガチャガチャやっていたら、いざ多様性社会に突入した瞬間、大気圏で燃え尽きるんじゃないでしょうか?

ちなみに味覚以外では、美しさや音楽、芸能なども、「好き・嫌い」が「正しい・間違い」と表現されやすい分野です。私にとって女優の小西真奈美さんは、正気を失うくらい美しい存在ですが、もしそれを認めない人がいても、「ぐぬぬ」と思いながらも歯を喰いしばって許容します。

「金を払って食べたんだぞ。味を語るくらい好きにさせろ」という方。もちろんその通りです。「表現の自由」だってあります。店にとって不快な「酷評」でも、気に食わないからと言って簡単に消されちゃ困りますよね。実際「酷評」を削除するのって凄く大変で、社会的な評価が下がったことの証明や、仮に相手の誤解による低評価でも、それが誤解だったと証明する必要があるなど、法的なハードルがかなり高い。つまりそう簡単に削除できないのです。でも「酷評」によって店側に具体的な実害が生じたら、その賠償を求める裁判を起こされる可能性は十分あります。個人特定の手続きも簡便化されました。ご注意ください。

何より情報の受け手である私たちが、レビューを俯瞰し、割り引いて受け止め、客観視する。誰もが情報を発信できる現代において、これこそ私たちが備えるべき情報リテラシーでしょう。

ちょっとラーメン食べてきますね。

Text:小木曽健(国際大学GLOCOM客員研究員)
※本記事のタイトルはFORZA STYLE編集部によるものです。



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