桂子:最初の結婚はデキ婚でした。子供の父親の男性とは、会社で知り合ったんです。彼は社長室付の社外取締役のような自由な立場でした。社長に世界中の“新しく楽しいもの”を持ってくるアドバイザーのようなことをしていたんです。10年前から電動キックボードとか、CBD(麻抽出成分)、水タバコなどが“来る”と言っていましたね。彼は15歳年上で当時39歳。私に対して「かわいいね」とか「面白い子だね」といじってくれて、好きになってしまったんです。
川崎:そうか。桂子さんは一目置かれちゃうから、同年代でフラットに付き合う人は少なかった。
桂子:はい。私、彼に初めてあだ名をつけてもらったんです。それで、好きになってしまった。それまで恋人はいたのですが、みんなよそよそしかったし、何をしてもつまらなかった。でも彼は違う。楽しいことへの探求心がハンパなく、私の方がのめり込んでしまい、気づくと息子が授かっていた。
川崎:それで結婚。結局話を戻してしまうけどご両親はなんと?
桂子:激しく落胆していました。あんなに落ち込むとは思わなかった。彼の最終学歴は美大中退。父は「高卒ごときに、桂子を嫁にやるとは」と肩を落とし、母は「あなたを医者に嫁がせるのが私の夢だった」と泣かれました。結婚式も大学中退の男とデキ婚したということで、身内だけで小さく行いました。
川崎:でも式はやるんだ。
桂子:はい。親戚の手前やらなくては。小さくと言っても、50人規模です。私の側のテーブルはお通夜のような雰囲気。彼のテーブルははっちゃけていて、その温度差がいたたまれなかった。私も親に申し訳ないことをしてしまったという罪悪感があった。

川崎:好きな人と結婚して幸せなのに、親や世間とも両立させようする。責任感が強い長女の“あるある”ね。
桂子:ウチの親族が、彼側のテーブルにドン引きしている姿に、彼も気付いて、「俺、嫌われているよね」って。