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LIFESTYLE 新田龍の「コンプラ総研」

警察に逮捕されてもクビにできない? 急増中の「モンスター社員」を合法的に解雇する方法。

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いま、日本企業はさまざまな難問を抱えているが、その本質をきちんと把握している人は少ない。そこで、我が国におけるブラック企業問題の第一人者・新田龍が、ブラック企業、ハラスメント、労務トラブル、問題社員、コンプライアンス、リスクマネジメント、炎上トラブル…など、あらゆるビジネスリスクを分析し解説していく。

映画やマンガでは、ヘマをしたり問題を起こした部下に対して、上司や経営者が「お前はクビだ!」などと宣告する場面をよく見かける。

しかし、これができるのはあくまでフィクションの世界や、日本とは法律が異なる海外の話。我が国ではそう簡単に、従業員のクビを切ることはできない。「労働契約法」をはじめとした法律と、これまで裁判で解雇は無効だと判断された「判例」の積み重ねによって、労働者の雇用は手厚く守られているからだ。それがたとえ、会社に被害をもたらすような問題社員だとしても……。

ⒸGetty Images

労働契約法第16条 
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

「社会通念上相当」というのは聞き慣れない言葉だが、簡単に言えば、「会社は社員を解雇できるが、それには皆が納得できるだけのちゃんとした理由が要るよ」ということであり、納得できるだけの理由がなければその解雇は無効となる。具体的には、

1、人員削減の必要性があること
2、解雇を回避するための努力が尽くされていること
3、解雇の対象者の人選基準、選定の方法が合理的であること
4、解雇前に、解雇の対象者への説明・協議を尽くしていること

という、4つの要件を満たしているか否かとの観点から判断される。

もし「不当解雇」として裁判になり、「解雇の合理性や相当性がない」と判断されて会社側が負けた場合は、会社側は従業員に対して「解雇とされていた期間中に本来支払われていたはずの未払い賃金」もしくは「解決金」を支払わなければならない。

ちなみに解決金の相場は、解雇時点における賃金の3~6ヵ月分程度。さらに、解雇の理由がないことが明らかなケースでは、賃金の1年分程度の解決金となってしまう可能性もあるのだ。

俗に「日本は解雇規制が厳しい」などと言われるが、これは決して「解雇を規制する法律がガチガチに固められていて、解雇したら即ペナルティが課せられる」といった意味ではない。

「解雇自体はできるが、もしそれが裁判になった場合、解雇無効と判断されるケースが多いため、実質的には解雇が困難」という表現がより実態を正確に表していると言えるだろう。

では、読者諸氏に問題をお出ししよう。

Q.法律や判例に即して判断した場合、「社員をクビにしてもOK」なケースは次のうちどれだろう?

□無断欠勤を繰り返している


□普段から全くやる気がなく、外回り営業するといって外出してはサボっており、周囲に悪影響を与えている


□個人の売上目標を半年間にわたって達成できていない


□社員の不用意なSNS投稿がネットで炎上し、それを理由に貴重な取引先が離れてしまい、会社に約400万円相当の損失を与えた


□パワハラの傾向があり、機嫌が悪いときは大声で暴言を吐くので、周囲の社員が畏怖している
 

□プライベートで作った借金が返せなくなり、消費者金融会社から会社宛に「給料差し押さえ通知」が送られてきた
 

□詐欺の容疑で警察に逮捕された


答えは、「いずれの場合もクビにするのはNG、もしくは困難」だ。

なぜ、会社に損害を与えるモンスター社員を解雇することができないのだろうか? また、どうすれば合法的に解雇ができるのだろうか?

☆後編では、法律を盾に横暴を働く問題社員を、正統なやり方で解雇する方法を解説してみたい☆

Text:働き方改革総合研究所株式会社代表 新田龍



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