康子さんは、Bさんに対しては他の生徒と同じように扱おうと心掛けている。なぜなら、彼女が『何事も起きていないように振る舞う』からだ。その健気さは、思わず聞いているこちらが涙ぐみそうになる。
「ヤングケアラーというものが社会問題になっているという話を、社会科の先生が授業中にした時にBさんは、目を丸くして驚きの表情をしていたそうです。自分はヤングケアラーではないと思っているような態度だったと、社会科の先生は仰っていました」
康子さんには、Bさんが自分はヤングケアラーだと自覚していないのか、わかった上でそうではないという風に装っているのかはわからない。ただ彼女も、彼女の母親を守りたいのだろうと考えると、むやみに手を出せないのだ。
「これからも、どうすべきかわかりません。きっと答えは出ないでしょう」
そう言って康子さんは、深いため息をついた。
Text:FORZA STYLE
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