いまさら聞けない？シトロエンのハイドロニューマチックの魅力とは？

■2種類の流体を組み合わせることで「魔法の絨毯」を実現

「ハイドロニューマチック」のハイドロは「水」、ニューマチックは「空気」の意味ですが、実際には、前述したように、ハイドロの部分は専用のオイルを、ニューマチックの部分は窒素ガスを使用しています。

エンジンルームにある「スフェア」と呼ばれる金属製の球体の中に窒素ガスとオイルをゴムの膜で仕切って封入し、窒素ガスがサスペンションの役割を、オイルが力の伝達を担当。ガスは気体ですので圧力をかけると体積が縮み、反発力が強くなります。が、オイルは圧力をかけても体積は変わらないため、封入されているオイルの量を変化させれば車高を調整することもできます。

この回路の途中にオリフィス(絞り弁)を設けることでオイルの移動時に抵抗を発生させ、ショックアブソーバーと同様に減衰力を得ることができる、という仕組み。また油圧を利用して車高を意図的に調整できるので、乗車人数が変化しても車高を一定に保つことも。特性が異なる2種類の流体を組み合わせたことで、まるで魔法の絨毯で空中を進んでいるかのような、滑らかで上質な乗り心地を生み出すことができたのです。

また、ハイドロニューマチックは、同じ油圧回路をギアのセレクターとクラッチコントロール、ブレーキ、パワーステアリングに使用しているため、クラッチペダルのないセミオートマティックトランスミッションにもなっており、当時としては非常に画期的なシステムだったのです。