先日、日産のミドルクラスミニバン「セレナ」に新型が登場した。先代セレナの長所を受け継ぎつつも、外観もインテリアも装備も、大きく先進性を増して登場となった新型セレナだが、特に斬新だったのが、シフトだ。ボタン式、しかも横にボタンが並ぶ形式となったのだ。
ボタン式のシフトは、他メーカーで実績はあるのだが、シフトボタンを横に並べるレイアウトは、おそらくセレナが初。このように、近年のクルマのシフトセレクターの形状は、どんどん多様化しており、新型のAT車においては、旧来のシフトノブを持つクルマがどんどん少なくなってきている。シフトノブが消えていく理由と、ないことによるメリット、そして無くなることによるデメリットについて、考えていこう。
■旧来のシフトノブは「オールドスタイルの象徴」
フロアやインパネ(かつてはコラム式もあった)からシフトノブが生えたクルマに、何十年も触れてきたベテランドライバーにとっては、シフトセレクターが横に並ぶ日が来るなんて、想像すらしなかったことだろう。
冒頭でも触れたように、シフトセレクターは近年多様化しており、旧来のノブ式に近い小型のレバー式のほか、スバル「ソルテラ」/トヨタ「bZ4X」で採用された、ダイヤル式のシフトセレクター、また、一部のホンダ車や、BMWの新モデルの一部では、ボタン式が採用されている(ホンダもBMWも、ボタンの並びは縦)。

現在のクルマのシフトは、機械的に繋がっていない「シフトバイワイヤ」式のギアセレクターが主流であるため、シフトノブであろうとなかろうと、ギアセレクトができる機構があればいい。なぜ多様化しているのかについては、それぞれのモデルごとに事情は違うだろうが、共通しているのは、「古臭いイメージから脱却したい」ということだ。
■レバー式のデメリットとは?
シフトノブのあるストレート式のギアセレクターは、コストが安い(構造がシンプル)ことや、操作が直感的で分かりやすい、シフトポジションがどこにあるか目視ですぐ分かる、力を入れやすい、長らく使われてきたので馴染んでいる、といったメリットがある。優れたデバイスではあるのだが、オールドスタイルの象徴でもあり、どこか古臭い。また、シフトノブが動くセレクターの範囲が大きいため、レイアウト性もよろしくない。

そこで登場してきたのが、リターンタイプのシフトレバーだ。DレンジやPレンジに入れて手を離すと、元のポジションへと戻る構造で、狭い占有面積でシフトチェンジができることから、現在広く採用されている。インパネやコラム(メルセデスではハンドル右側にある)など、場所を問わないというのが最大のメリットだ。
ただ、レバー式は、シフトポジションの確認がしづらいケースもあり、また、クルマによっては操作方向がわかりづらく操作ミスをしかねない、などのデメリットがある。ボタン式やダイヤル式も、一長一短があるのが現状。とはいえ、先進的にみえて、なおかつレイアウトがすっきりする、といったメリットが勝ることから、各メーカーともこれらを取り入れているのだろう。スマホやタッチパッドに慣れた世代にとっては、このほうが馴染みやすいのかもしれない。