幸子さんは気づいたそれらの問題点を、すべて会議などで提示したそうだ。でも、その発言は、若手たちや上層部によって一蹴される。
「そうやって悪いことばかりを数え上げていたら、新しいことなんて何もできませんよ。先生はもうご退職される身なので、先のことなんて考えていないのかもしれませんけど、僕たちは教育の未来を見ているんです」
そう得意げに言う若手教員に、幸子さんは何も言わなかった。上層部は、生徒にiPadを与えたことが間違いだったとは今更認められないし、若手教員たちは、自分たちの得意のフィールドで勝負したいのだろう。そう考えた彼女は、口をつぐむことにしたのだ。
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