木工作家として順調にスタートするために
ひさこ先生:卒業後すぐに、木工作家としてスタートできたわけですか?
吉川和人:そうですね。でも、卒業してからのスタートで、無収入の期間があるなんていう悠長なことは許されなかったんで、在学時から作ったものを持参してお店へ営業にまわっていました。
FORZA STYLE:アクションが早いっ!
吉川和人:最初は、クラスカ(CLASKA)さんと、アウトバウンド(OUTBOUND)さんに飛び込みで営業しました。
FORZA STYLE:思い切りもいいんですね。
吉川和人:カッシーナ時代に法人営業を8年、企画を4年経験したのが役に立ちました。やはり営業は基本ですから。どうしても”作る”だけをやってきた方はシャイだったり遠慮してしまう部分があると思いますが、僕は売り込みに行って断られても全然へこたれない。新人だった頃なんて設計事務所に飛び込み営業するのが基本だったので、断られるのが当たり前でしたから。
ひさこ先生:サラリーマン時代の経験が活かされてますね。
吉川和人:その甲斐あって卒業と同時に取り扱って頂けることになりました。木工作家という肩書きで動くようになったのは、卒業した年の夏か秋にクラスカさんで個展をさせて頂いたタイミングで、世間的にも認知して頂けたようです。
FORZA STYLE:スタート前からしっかりとエンジンを温めて、スタート時点で全力で走り出せたのが素晴らしい。そして見ている人は、ちゃんと見てくれていたわけですね。ちなみですが、2年間分の授業料と、その間の収入はどうしていたんですか?
吉川和人:意外とお金はかからなくて、学費は1年で50〜60万円くらいでしたし、ひなびた一軒家の家賃は月3万円くらい。家族は東京に残し、そこで1人で生活していました。
木工作家として活動できたのは、クラスカ(CLASKA)の大熊さん、アウトバウンド(OUTBOUND)の小林さんに取り扱って頂けたのがかなり大きくて。それきっかけで、いろいろなお店からお声を掛けて頂けるようにもなりました。
ひさこ先生:その頃の商品ラインナップは、どんな感じだったんですか?
吉川和人:バターナイフとスプーン、それとお皿ですね。その頃は地下の工房で、高さが180cmしかなかったので家具とかは作れなくて。とにかく手元で作れるものだけでした。
FORZA STYLE:個人的に気になっていたんですが、フォークは作らないんですか?
吉川和人:構造的に折れる心配があるんです。他の作家さんが作っているのは見かけますが、自分が納得できるデザインを考える時間がないというか…。たくさんリクエストも頂くんですが、世に出す以上は
FORZA STYLE:責任のとれないものは作れないと。
吉川和人:そうですね。その前に作りたい、作るべきものが多すぎて、辿り着けていないのが正直なところです。
FORZA STYLE:では、いつか誕生するのを楽しみに待たせて頂きます!
後編へつづく
[INFO]
現在、世田谷・松陰神社前駅の商店街にある This___ (ディス)にて、榊麻美植物研究所の榊麻美さんとの二人展が開催中。会期は本日9月10日(土)までですが、最終日となる本日は吉川さんが在廊予定。作品をゆっくりご覧頂きながら、吉川さんのお話を直接聞けるチャンスなので、興味のある方は、ぜひ訪れてみては?
This(ディス)
東京都世田谷区世田谷4-2-15
https://www.instagram.com/this___tokyo/
さらに、9月27日(火)からは 新宿伊勢丹にて
他にもこの企画に登場してくださった山田隆太郎さんや
ISETAN ARTS & CRAFTS
会期:9月27日(火)〜10月2日(日)
時間:10:00〜20:00(最終日18:00終了)
会場:伊勢丹新宿店 本館6階催物場
吉川和人
木工作家
慶応義塾大学商学部卒業後、株式会社カッシーナ・イクスシーにて勤務。在職中に一年間の育児休暇を取得と同時に渡仏。2012年に退社し、岐阜県立森林文化アカデミーにて木工技術の基礎と日本の森林文化を学ぶ。卒業後、木工作家として活動し、2017年株式会社ウォールデンウッズを設立。現在は東京で制作活動中。1976年生まれ 福島県出身。
https://www.kazutoyoshikawa.comhttps://www.instagram.com/kazutoyoshikawa
行方ひさこ
ブランディングディレクター
アパレル会社経営、デザイナーなどの経験を活かし、ストーリーやデザインなどの一貫したコンセプトワークを行うことでトータルでブランドの向かうべき方向を示す。食や工芸、地域創生などローカルに通じる幅広い分野で活動中。
https://hisakonamekata.com
https://www.instagram.com/hisakonamekata
Photo:Shimpei Suzuki
Direction:Hisako Namekata
Edit:Ryutaro Yanaka