その肌感覚は、これまで麻希が感じたことのない相性で、求められることの嬉しさを感じずにはいられなかった。女性ホルモンが活性化したせいか、なぜか急に青空の美しさを感じたり、自宅に花を飾るようになるなど、麻希の生活は明らかに変化していった。女としての充足感がたまらなく幸せな気分にさせてくれ、夫も麻希の変化を喜んでいた。
そんな関係が一年ほど続いた頃、修史の九州転勤が決まる。
すでに26歳の修史は、麻希にとって疲れた体やメンタルを癒してくれる、専属のSPAのようでありながら、刺激を与えてくれる存在になっていた。
その修史がいなくなる……。麻希はとても寂しさを感じたが、夫と離婚をすることなどは考えていなかった。寡黙な夫は人生を共にするパートナー。結婚するときにそう思って、ある意味恋愛とは一線を引いて選んだ人だ。結婚とはそういうものだと思ったし、今でもそう思っている。夫も結婚と恋愛は別という価値観を持っていた。
「そのうちお互い好きな人ができるかもね。でもこの関係は壊したくないな」
なんて二人で冗談っぽく話していたこともある。
だからといって他に求めていい理由にはならないかもしれない。でも誰かを好きになることが夫婦生活に彩りを与えることになるなら、それでもいいのではないか、と麻希は思うようになっていた。
©Getty Images
たまにしか会えない、その程度が今の私にはぴったりなのかも。九州の仕事増やさなきゃ。と、麻希はコーヒーショップで美しい青空を眺めながら密会作戦を練りはじめた。
Text:女の事件簿調査チーム
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