このVtuberの世界での設定とは分かりながらも、姫と呼ばれることにドキンとまた胸の鼓動が鳴る。お互いの顔が見えないからこそ言い合える、小っ恥ずかしい言葉にたまらない気持ちになる。
「王子こそまだ寝ないんですか?」
「僕はまあ、眠れなくて……そうだ、よかったらちょっと話し相手になってくれない? 配信短かったから、なんか不完全燃焼でさ。リンキーちゃんいつも面白いコメントしてくれるし、一度話してみたかったんだよね」
「え! 私なんかでよければ……もちろん大歓迎ですが」
「これ、俺のLINE。画面通話でかけていいよ」
それはつまり、Vtuberとしての仮面を被った姿ではなく、生身の人間としての顔を見せてもいいよという意思表示だ。中身の顔を私、見ていいの? 梨花はそう思いながらも、ついにあのナオトの正体に近づけることに興奮し、すぐさまLINEで友達追加をする。
LINEでの名前は「N」となっており、アイコンは若い男性の後ろ姿の写真だ。梨花はすぐに「リンキーです」と一言送り、既読になったことを確認した後に画面通話をかけた。
RANKING
2
3
5
2
3