「一瞬、何が起きているのかわからなかったんです。でも、シャワーの音と共に聞こえてくる鼻歌が夫でないことを如実に表していました。そこにスティーブがやってきて、私にやさしく語り掛けます。昨日、私に出会えてうれしかったこと、そして昨日愛し合ったことが素晴らしかったこと……。夫との夫婦生活が結婚してから数えるほどしかない私にとって、一抹の恥ずかしさと同時に、気持ちが高揚するのを感じました」
高揚感を楽しむのもつかの間、さてどうやって夫に外泊の言い訳をしようか……。しかし、いつまでもここにいるわけにはいかない。愛子は部屋を出て、隆の眠る部屋へ。
「6時。夫はまだ眠っている時間だ。もしかしたら、何事もなかったように部屋に滑り込めるかもしれない」
足早に部屋に向かい、扉を開けると寝室にはいつも通り眠る隆が。愛子は急いでシャワーを浴びて身支度を整えた。愛子の不安とは裏腹に、そのあとは何事もなく、何を聞かれることもなく毎年と同じハワイでの一日が過ぎ去っていった。
しかし、昨晩同様、毎年とは違うことがあった。それは、愛子が眠る場所だった。
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