純度をあげて輝きを増した、ルーセント・スティールA223
2019年にショパールの「アルパイン・イーグル」に採用されてから一躍有名になったのが見出しのステンレスです。オーストラリアの鉄鋼会社フェストアルピーネ社がショパールと共同開発したもので、素材の純度を高めることで硬度を高めたとされています。
このステンレス鋼の組成は非公表ですが、金属アレルギーを起こしにくいことと、硬度を高めていることからニッケル含有量を減らし、モリブデンを増やしていると推測できます。
ルーセント・スティールは英語で直訳すると、「Lucent:輝く」「steel:鉄」という意味です。筆者はアルパイン・イーグルの実機を見ましたが、まさに白銀色、「スイスアルプスの光り輝く雪をイメージしたのでは?」と個人的に思っています。
エバーブリリアントスティールは腕時計用に初めて採用した材料、904Lに似ている?
hero_fineplay2さんの#腕時計魂での投稿より
「エバーブリリアントスティール」はセイコーウォッチが腕時計用に初めて採用したステンレスです。これも詳しい組成は非公表ですが、さまざまな時計メディアの記事を要約するとこのステンレスは「実在する材料」だと判断できます。
裏付けを取るため、材料物性学科修士課程卒である筆者の同級生Mにメールで「ブリリアントスティール」を問い合わせたところ、次のような回答を貰いました。
可能性のある耐食材料ということで①SUS312L、②SUS445J1、③ SUS445J2、④SUS316、⑤SUS304の5つを候補に挙げてくれました。
実際セイコーの担当者は時計メディアで「ブリリアント・スティールは、海洋構造物や化学・食品系プラントなどで使用される環境用の素材でした」との記述があり、そこから考えると①のSUS312Lが最有力候補だと思います。
さらに彼が送ってくれた参考リンクには、耐食性ステンレスの対孔食指数という錆びにくさを示す数値がありました。これを見る限り①が最も高い41.36という数値を示しています。
tf_wpyprさんの#腕時計魂での投稿より
友人Mはロレックスに採用されている904Lの可能性もあると推測したそうです。しかし、ロレックス他数社で実績のある904Lを伏せてセイコーが発表するのはあまりにも不自然と考え、候補から外したと聞きました。
つまりエバーブリリアントスティールの機械的性質は904Lと極めて似たものだと言えます。
セイコーがこの材料を採用した理由は、これまでのステンレスと風合いが全く違うことも理由に挙げています。やはり他社との差別化は重要です。