「いやいや、お礼を言うのはこちらのほうですよ。お茶も嬉しいし時間もあるんですが……廊下に荷物が出たまんまなので……どうしよう」
「この階、あと2部屋しかないんですが、ちょうど引っ越しが被ってて今は他に誰も住んでいないんですよ。だから置いていても大丈夫ですよ」
「じゃあ……お言葉に甘えさせてください」
そう言うと、涼介はぺこりと頭を下げながら子犬のような笑顔で微笑んだ。
お茶をしながら、蘭は涼介にいろいろと気になることを聞いていた。
©Getty Images
いつからこの仕事をしているのか、このアプリには業者が多いのか、今日引き取ってもらったような古い家電でも本当にリサイクルショップで売れるのか……そんな些細な質問全てに、涼介はひとつずつ丁寧に答えて行く。
工業高校を卒業したあと、涼介は貯めていたバイト代で軽トラックを買ってひとりで起業したこと。今は軌道に乗り、大きいトラックも持っていること。
父子家庭だったから、早く自立したかったこと。このアプリには多数の業者がいて、業者の中でも不用品の争奪戦が行われており、コロナ禍ではさらに厳しくなっていること。リサイクルショップでは、修理やセット売りなどもするから必ず売れるということ。
また、涼介は引越しも引き受けていることから、引っ越しの際に出る不用品を回収することで一石二鳥で稼ぐこともあるのだという。
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