「あ、先程はありがとうございました。由香里さん、でしたっけ。お礼を言いたくて、妻も含めていつもお世話になっているというのに迷惑までかけちゃって」
「いえいえ、お役に立てたのなら何よりです。お部屋には入れました?」
「鍵を忘れてたってことは、鍵をそもそも閉めていなかったってことなので……お恥ずかしながら、無事に入れました。本当にお騒がせしました、もう妻が出て行ったあとだったので困ってて」
「奥さん、働かれてるんですね」
「ええ、うちには子供がいませんからね。もう不妊治療もやりきったし、そろそろ何かしていないと妻もしんどいようで……」
そう呟いた直後、ヒロユキは言いすぎた、と言わんばかりの顔で口をつぐんだ。由香里は全てを察し、そっと笑顔で微笑んだ。
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