これまで「運動オタク」「単細胞」とさんざんからかって来たが、中年になってもスーツの似合う引き締まった体をして、家では悪口も愚痴も言わずいつも由里子を笑わせようとしてくれる。そんな夫はイケメンではないが、イケオジだったのだと今さら気付いた。
「疲れた。早くうちに帰ろう」
平凡な生活を「退屈」と解釈するのは間違いだ。平和だからこそよからぬ刺激を求めてしまう。もし波瀾万丈な人生を送っていたならば、平凡に憧れたに違いない。
「平凡って幸せな状態に慣れてしまった先に感じるものなのかもしれない」
由里子は帰りのタクシーの中で、行きとは違って見える景色を眺めながらそう思った。
Text:女の事件簿調査チーム
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