許すも何もむしろお礼が言いたいと由里子は思った。二股をかけてくれて、追いかけないでくれて本当に有難う。
「嫁を何度も泣かしたよ……」
申し訳なさそうな口ぶりだが、自分にうっとりしているのが見てとれる。
浩司を好きだった自分が信じられないが、彼の性格はきっと変わってはいない。歳を重ねて由里子の価値観が変わったのだ。若いころの自分は満たされない独占欲にもがいていただけなのかもしれない。
別れ際、浩司は由里子の腕を掴んでこう言った。
「本当は俺のこと、ずっと忘れられなくて呼んだんじゃないの? しとく?」
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