そして聞こえてきたのが早紀の怒号。
「バカなんじゃない? 私と別れられるわけないでしょ? 雅樹も甘いわよね。そこにいるの美耶さんでしょ? わかってるんだから。ちょっと連れてきなさいよ。泥棒猫!」
「美耶さん、私の雅樹取ったの絶対許さないから。覚悟しときなさいよ!」
ワイン会でのあの大人しそうな早紀とは思えない言葉に、美耶はショックを隠しきれなかった。
雅樹はそんな美耶の表情を察し、キーチェーンを外さずに、すぐに早紀の家へ行くからとその場を収めた。
©Getty Images
聞けばこれまでも早紀は、雅樹に対しストーカーのような行動を繰り返しており、さらに自殺未遂歴もあるという。雅樹が別れたいと話していたのに、どうやら早紀は納得していなかったようだ。
美耶は別れたいのに別れられないという二人の関係に巻き込まれてしまった。
「私、人の彼を取ろうなんて思ってなかったのに……」
美耶はベッドの上で震えが止まらなかった。
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