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FOOD 洋食天国

【後編】「喰いもの屋おおき」の絶品ビーフカツレツを食べたら●●だった

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料理芸人のクック井上。による、“飲食店は開店してから、2年以内に半数が閉店に追い込まれる”というデータがある中、何十年もの間、お客に愛され続けてきた洋食屋さんを巡り、その想い、歴史、人、町を知る連載コラムです。

■これぞ洋食の“ビーフカツレツ”だ!

到着しました、『喰いもの屋おおき』の限定メニュー「ビーフカツレツ定食」(1320円)。「撮影の時にドレッシングかけると、しなっとしちゃうから後でかけようか?」と奥様の大木直美さん。お優しい。

ビーフカツレツに、丁寧に仕込まれたデミグラスソースがたっぷりかかっていて、そのお姿は威風堂々。そこにお茶碗に盛られたご飯・お味噌汁・冷奴と、これぞ街場洋食の組み合わせに大興奮です。さぁ、まずはメインのビーフカツレツをば。

継ぎ足し継ぎ足しのお店特製デミグラスソースの深み・苦味・スパイシーさが舌を優しく包む。噛めばデミグラスソースのかかっていない部分の衣の歯触りと香ばしさが心地よく、追ってビーフの肉汁が染み出す。そして、肉汁とデミグラスソースが混ざり合い、口いっぱいに広がって一気に鼻腔まで届く。

間髪入れず、白米を口の中に放り込んでお味噌汁をすすり、口内調味をすれば至福のひと時。洋食なのになぜか白米&お味噌汁との相性抜群です。添え物のサラダも抜かりなしで、ドレッシングはなんと手作り。

市販品にはない、ツンのと来ない酸味や円やかな旨味。あゝ、ぬくもりを感じるドレッシングだ……。窓から見えるのは「宮下パーク」「渋谷横丁」。でも思い浮かべるのは、再開発前の「宮下公園」。

“昔は自由な人が住んでたり、スケボーの子たちがいたり。なんでもかんでも綺麗になっちゃって、ちょっと情緒っていうか、寂しいやね。”と店主の大木信治さん。もう20年以上前の話になりますが、僕も奥さんと結婚する前(まだ付き合って間もない頃)、デートで何があるわけじゃない宮下公園を歩いたことを思い出しつつ食べていき進めます。

ビーフカツレツっていうとハイソな感じがしますが、誰が食べてもなぜかどことなく懐かしいと思える親しみやすさが漂う『喰いもの屋おおき』の限定メニュー「ビーフカツレツ定食」。

時折、冷奴にも箸を伸ばしながら、ガラス越しに変わりゆく渋谷の風景を見続けてきたデミグラスソースをたっぷりつけて、白米&お味噌汁との幸せのループ。

気付けば、春にもかかわらず額に汗しながら10分足らずで平らげていました。手と手を合わせて、ご馳走様でした!ここからは店主の大木さんご夫婦にお店開店秘話など。さらに出会いの馴れ初めまでお話しいただいちゃいました。


■よく言われるのは夫婦ですごく楽しそうに仕事してるねって

── お店のオープンは26年前(1995年、1996年あたり)でしたね。その前は何をされていたんですか? 
大木信治さん
 20年くらい、下北沢の『アラスカ』っていう洋食屋で働いてた。カウンターだけのお店でした。
大木直美さん パン屋『アンゼリカ』の対面あたり。もう無くなっちゃったけどね。

── みそパンで有名な名店『アンゼリカ』ですね!僕も何度も通って、閉店前日も行きました。

大木直美さん 『アンゼリカ』さんとは親しくさせて貰って。ママも大ちゃん(『アンゼリカ』のご夫婦)もよく食べに来てくれてね。
大木信治さん 『アラスカ』も僕がやめて2.3年で閉めちゃったからね。下北沢も変わっていくね。

写真:クック井上。

── 『アラスカ』時代から受け継いでいる味はありますでしょうか?

大木直美さん 壁のメニューだとA.B.C.Sが一緒かな。
大木信治さん あとデミグラスソースは『アラスカ』と一緒。だって作ってる人間が一緒だから(笑)『ビーフカツ』は渋谷に来てから。

── 修行された『アラスカ』の歴史は、西暦で言うといつからですか?
大木直美さん
 『アラスカ』のオープンは大体、昭和48年(1973年)とか昭和49年(1974年)くらいなのかな。
大木信治さん 西暦で言われるとわかんないな(笑)。僕が昭和23年生まれで27.8歳の頃だから……、アバウトでいいよ(笑)。

── 『アラスカ』が最初の修行のお店ですか?
大木信治さん
 違う違う。その前にここにもいたしね。
大木直美さん ここ(『喰いもの屋おおき』がある場所)が昔、シチューとフランス料理の店『サントロペ』っていう洋食屋さんだったの。

 

── え!? この場所『サントロペ』で働いて、下北沢の『アラスカ』に移り、またもう1回この場所でご自身のお店『喰いもの屋おおき』を開いたってことですか?
大木信治さん
 そう。『サントロペ』のオーナーがお店閉めるっていうんで、ここでやらないかって話が来て。それで、昔働いていた『サントロペ』の場所で自分のお店『喰いもの屋おおき』を開いたの。
大木直美さん 『サントロペ』は今から50年くらい前にオープンしたお店で、この人が働いてて、私はその頃17歳でアルバイトをして出会ったの。

── うわぁ最高です!
大木信治さん
 間にステーキ屋さんで働いたりね。あっち行ったりこっち行ったりしてたよ。フラフラして、流転の人生よ(笑)。
大木直美さん 色んな人に声かけて貰ってね。

── お人柄と腕ですね。お店の将来の展望などありますか?
大木信治さん
 何にもない。もう子どもも育てて孫もいるんだよ。あとは朽ちていくだけ(笑)3年前にひょんなことでお医者さんに胃がんを見つけて貰ってね。症状も無かったのに本当にたまたま。だから、のんびり行きましょうって。
大木直美さん 地道に。あと何年やるかもわからないからね。体力もだんだん追いつかなくなってきてるからね(笑)でも、ここに来るだけで元気になる!ボケ防止(笑)

── “ここに来るだけで元気になる”って素敵ですね。あと、お二人とも楽しそうですよね。
大木信治さん
 人と話すってのが良いんだろうね。お店の人がブスッとして仕事してるとこで食事するの嫌じゃん。
大木直美さん よく言われるのは夫婦ですごく楽しそうに仕事してるねって言われる。

あゝ、何と素敵なご夫婦なんだ。良い意味で変な力が入っていなくて、とってもほっこり安心感。
朗らかなお人柄がお料理にも出ていて、自然とまた行きたくなる洋食屋さんです。

最後に、大木信治さん&大木直美さんと記念撮影し、お店を後にしました。美味しいお料理とお二方が醸し出す雰囲気のおかげで、心の底から和みました。

約50年前にオープンした、シチューとフランス料理の店『サントロペ』で奥様である直美さんと出会った店主・大木信治さん。その後、下北沢『アラスカ』の他、多くのお店に腕を認められ、求められた場所で腕を振るい続けてきました。そして26年前、お二方が出会った渋谷『サントロペ』の跡地にオープンさせたのがここ『喰いもの屋おおき』でした。

渋谷『喰いもの屋おおき』は、店主・大木信治さんが腕を振るってきた、歴代のもう無くなってしまったお店の味を受け継ぎ、集約+進化させたお店でした。本当に素敵すぎる……。皆さんの周りにも、店主さんの人柄が滲み出る洋食、昔懐かしの味を受け継ぐ洋食があると思います。「洋食」という名の日本の食文化。まだまだ巡ってその想いや歴史、人や町に触れたいと思います。

喰いもの屋おおき
東京都渋谷区渋谷1丁目24-7 渋谷フラットビル 2F
03-3409-2750
営業時間 月~金 11:00~22:00、土日 11:00~20:00
不定休
※新型コロナウイルス感染拡大等により、営業時間・定休日が記載と異なる場合がございます。ご来店時は事前に店舗にご確認ください。

Text:Cook Inoue
Photo:Takuji Onda
Edit:Takashi Ogiyama

クック井上。プロフィール
お笑いコンビ「ツインクル」のクック井上。です! 芸人でありながら、食のイベントMC・料理教室講師・食のプロデュース等も! ●フードコーディネーター●ホームパーティー検定●食育インストラクター●野菜ソムリエ●BBQインストラクター●アスリートフードマイスター●こども成育インストラクター●パエリア検定 など食に関する資格も多々あり。
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