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FOOD 洋食天国

赤坂御所の隣にたたずむ笑顔の絶えない洋食屋「ほーむれすとらんわか」のオムライスとハンバーグ

料理芸人のクック井上。による、“飲食店は開店してから、2年以内に半数が閉店に追い込まれる”というデータがある中、何十年もの間、お客に愛され続けてきた洋食屋さんを巡り、その想い、歴史、人、町を知る連載コラムです。

料理芸人のクック井上。です!  “飲食店は開店してから、2年以内に半数が閉店に追い込まれる”
というデータがある中、町には長年お客さんに愛され続けてきた洋食屋さんがあります。そんな老舗の洋食屋を巡り、その想い、歴史、人、町に触れる連載コラム【洋食天国】。今回は、赤坂『ほーむれすとらん わか』にやって参りました。

創業は1970年(昭和45年)。テレビでは「あしたのジョー」が放映。大阪で日本万国博覧会が開催され、東京では銀座にマクドナルド1号店ができ、初の歩行者天国が開催された年です。戦後25年、高度経済成長期の日本に想いを馳せつつ、『ほーむれすとらん わか』の看板メニュー「わか風オムライス」(ハンバーグトッピング)を注文と参りましょう。

 

■看板メニュー「わか風オムライス」(ハンバーグトッピング)の作り方

創業者であり、現在も厨房に立ち続けている店主・若林昭彦さんが教えてくださいます。まず、フライパンにバターをひき、ご飯を炒めます。具材は玉ねぎのみと超シンプル。ケチャップライスにせず、バターライスのままお皿に盛ります。

お次はハンバーグの用意。見るからにつなぎは最小限、肉感たっぷりのハンバーグのようです。
フライパンでハンバーグを焼きつつ、別のフライパンにラードをひいて豚肉に火を通し、玉ねぎ・ピーマンにはさっと火を通します。

炒めた豚肉・玉ねぎ・ピーマンを溶き卵に混ぜたらフライパンに流し込み、小刻みに揺らしながら半熟卵に仕上げ、バターライスの上にのせます。

焼いたハンバーグをのせ、自慢の特製デミグラスソースをかけたら完成。

立ち昇る湯気、厨房に充満するラードと玉子の甘い香り、そして絶対に美味しいデミグラスソース……、足早に席に着くと致しましょう!


■主役は玉子でもライスでもなくデミグラスソースだ!

着皿しました、威風堂々「わか風オムライス」(ハンバーグトッピング)!

「わか風オムライス」+ハンバーグ(1030円+220円)

まずハンバーグには手を付けず、「わか風オムライス」単体でいただくと致しましょう。ライス・玉子・デミグラスソースをすくい、口に入れた瞬間 “凄い!”と声を発してしまった……。何が凄いって、調和が異次元なんです!

凄い点①<デミグラスソース>
サラッとしつつもコクがあり、ややビターなのに軽さも兼ね備えた繊細なデミグラスソース。舌の味蕾に触れた瞬間に全大人の頬が緩む味。ただ、凄いのはデミグラスソース以上に、デミグラスソースを活かすために計算し尽くされた全体のバランスなのかもしれない……。

凄い点②<玉子とのバランス>
世のオムライスは大きく分けると、薄焼き玉子オムライスorふわとろオムライスの2つに分けられる。が、「わか風オムライス」の玉子はどちらにも属さないタイプ。“薄焼き玉子オムライス”だとサラッとしたデミグラスソースは馴染まないし、“ふわとろオムライス”だと繊細なデミグラスソースが負けてしまうが、「わか風オムライス」上は程よく半熟で下は程よく堅焼きの玉子。これが繊細なデミグラスソースと見事なハーモニーを奏でているという以上に、しっかりとデミグラスソースを引き立てて、「わか風オムライス」における主役に押し上げている。

凄い点②<ご飯や具材とのバランス>
もちろん、デミグラスソースが主役なので、ライスにもケチャップを使わず、一歩引いたバターライスにしている。玉子に混ぜ込まれた存在感のある肉や食感を残した野菜も良いアクセント。

というわけで、これらのデミグラスソースを活かすために計算し尽くされた全体の調和に“凄い!”と声を発してしまったというわけです。

本当に“凄いと思ったときは、人間あっけにとられて真顔になる。

店主・若林昭彦さん曰く、濾して濾して濾して……デミグラスソースが完成するまでに、なんと3週間もかかるっていうんだから、そりゃ主役じゃないとおかしい! しかし、そのデミグラスソースはあくまで主張は強すぎず、優しい味わい。引き立て役の玉子やライスの良さまで引き出す、という懐の深さも持ち合わせているのです。

さて、そろそろハンバーグと参りましょう。220円とお手頃価格ながら、もはやこのトッピングがデフォルトなのではないかというくらいに「わか風オムライス」にマッチ。つなぎも最小限、食感を残す程度に練られているので舌触りや歯ざわりが良い。そして、肉本来の旨味や香りも感じられます。言わずもがな、デミグラスソースとの相性は抜群! 単体で食べても、オムライスの具材として口内調味しても、その魅力を楽しむことができます。

ワンスプーンで、オムライス+ハンバーグの小さい丼を作って頬張れば至福のひと時が訪れる。

そして「わか風オムライス」をオーダーした人は、全て食べ終えた後のお皿についたデミグラスソースを1滴たりとも残すまいと、スプーンですくえるだけすくっている自分に気づく事でしょう。恐るべし、3週間手間暇かけて作られた特製デミグラスソースの魔力です。

ここからは、幸せの一皿を生み出した店主・若林昭彦さんに、お店の歴史とお料理への思いを伺うと致しましょう。

 

■理由はシンプル。楽しくて仕方がないから、今も厨房に立ち続けている!

── お店の歴史について教えてください。
店主・若林昭彦さん
 1970年(昭和45年)、私が22歳の時に創業しました。

── ずいぶん若くして独立・創業されたんですね。修行はどんなところでされましたか?
店主・若林昭彦さん
 創業前は7年くらい色んな所で修行しました。丸の内『東京グリル』、有楽町『ジャーマンベーカリー』、元読売ジャイアンツの選手がやっていた新宿御苑の洋食屋さん、新橋『ステージクラブ』などです。有楽町『ジャーマンベーカリー』にいた頃は19歳、20歳くらいだったかな。ドイツ人の社長さんがやっているお店で、ハンバーガーやエスプレッソもあって、その頃にしてはハイカラなお店でした。

── いろんなジャンルのお店で修行されたんですね。『ほーむれすとらん わか』は創業時と場所は変わらずですか?
店主・若林昭彦さん
 はい、ずっとここです。当時のTBSのお偉いさんがアットホームな雰囲気だからと『ほーむれすとらん わか』とつけてくれました。実はこの場所は、うちがやる前は梅宮辰夫さんが和食屋さんをやっていたんですよ。

── 凄いエピソードですね!それにしても「わか風オムライス」が絶品でした。
店主・若林昭彦さん
 創業当時、デミグラスソースをかけたオムライスというのはあんまりなくて、看板商品として開発しました。その後、お客さんのリクエストに応えていくうちに、メニューが増えていきました。

── 唯一無二なのに、不思議とホッとするオムライスだと感じました。1階の厨房に女性がお二方いらっしゃいました。
店主・若林昭彦さん
 うちの娘たちです。以前は、碑文谷で『雨のち晴レ』というカフェをやっていたのですが、そちらを閉めて7年ほど前にここに来てくれたんです。主に長女がホール、次女が厨房を担当しています。継ぎたいと言ってくれて幸せですね。

── ご関係、素敵ですね。それにしても、今でも1日中厨房に立たれるなんて、お元気ですね。
店主・若林昭彦さん
 料理が好きなんですよ。うちは、親父が早く亡くなって、おふくろさんが仕事していたので、その頃からご飯作ったりなんかしていたんです。趣味の延長線上にこの仕事があったんです。昔は“お前、好きだけじゃコックはやれねぇぞ!”なんて言われたんですけど、好きだからやれたんです。今でもお料理を作るのが大好きだから厨房にいるし、みんなの賄いまで誰にも任せずに自分で作ります(笑)。

── 最高ですね!たまに“苦しくなくちゃ仕事じゃない”という方もいますが……
店主・若林昭彦さん
 いや“楽しくなくちゃ仕事じゃない”でしょ(笑)。ただただ楽しく、ひたすらこのお店をやったきて、今に至ります。

なんとも、素敵なお話を伺うことができました。楽しいって一番大切だし、お客にも伝わりますよね。最後に、店主・若林昭彦さん、娘の若林優さん、若林祥さんと記念撮影し、お店を後にしました。奥様・京子さんはこの時ご不在でしたが、ご家族みんなで力を合わせて営まれている、まさに“ほーむれすとらん”。その温かい味と雰囲気は、父から娘2人へ受け継がれていきます。

ところで、この取材ロケをしている横のテーブルに、上品な女性がお二方いらっしゃって、少しお話を伺うことができました。

“昔、この近くで働いていて、週に何回もここに食べに来てました。今日は近くに用事で来て、何十年ぶりに立ち寄ったんです。中途半端な時間だったからお茶だけのつもりだったけど、「わか風オムライス」を食べてるの見てたら食べたくなってきちゃった。今から頼もうかな…。他では食べられない味。思い出の味なんです。”何十年ぶりに立ち寄られて、当時を懐かしく思い出されているご様子でした。

皆さんにもそういう思い出の「洋食」ありませんか? 久しぶりにお店に行ってみてください。
友人や恋人や家族との食事の光景、交わした会話が蘇ってくることでしょう。「洋食」という名の日本の食文化。まだまだ巡ってその想いや歴史、人や町に触れたいと思います。

ほーむれすとらん わか
東京都港区赤坂1-5-18
03-3405-4763
11:00~21:30(L.O.21:00)
定休日 土日祝
年末年始の休業 12/28~1/4
 

Text:Cook Inoue
Photo:Takuji Onda
Edit:Takashi Ogiyama

クック井上。プロフィール
お笑いコンビ「ツインクル」のクック井上。です! 芸人でありながら、食のイベントMC・料理教室講師・食のプロデュース等も! ●フードコーディネーター●ホームパーティー検定●食育インストラクター●野菜ソムリエ●BBQインストラクター●アスリートフードマイスター●こども成育インストラクター●パエリア検定 など食に関する資格も多々あり。
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