■あと10年、80歳まではまだまだ元気に！
── お店の歴史について教えてください。
伊東四朗さん 親父がお店をオープンした時、僕は16歳か17歳の高校生。お店オープンと同時に修行を始めて今70歳だから53年目？ 54年目かな？ 最初は出前持ちから始めて、調理は高校卒業してからだね。出前は1日に50件くらいまわったかな。ウーバーイーツなんて問題じゃないよ（笑）
伊東加南子さん 昔はお蕎麦屋さんとお寿司屋さん、ラーメン屋さんぐらいでしょ？洋食の出前だからニーズがあったんじゃないかな。
── 1日に50件は凄いですね。
伊東四朗さん もう一人、大学生のアルバイトの出前持ちの人がいたんだけど、その人はバイト代貰えて、僕はナシだからね。修学旅行で北海道に行って、帰りは夜行で帰ってきて昼くらいにお店に着いたら“出前行ってこい！”だって（笑）。一応お土産持って行ったんだけど、ダメだったね（笑）。明治生まれの親父だから厳しかったんですよ。出前の先は会社や雀荘が多かった。お寿司屋さんにも行ったね。毎日酢飯だから、従業員さんは逆に洋食が恋しくなったのかな？
── お寿司貰ったり、ご褒美は無かったんですか？
伊東四朗さん そういうのは無かったな。ガキだったから、お寿司なんて食べたことなかったね。あっ、お姉さんと付き合った事あったね（笑）。帰り送っていくよなんて言ってね。その頃は怖いもん無しだったからね。モテたもん（マスクを取る四朗さん）
伊東加南子さん （苦笑）
── あははは！最高ですね。お二方はご結婚はいつされたんですか？
伊東四朗さん 若くで結婚したから、結婚した頃は若かったんだよ。当たり前か（笑） 。
伊東加南子さん 21歳と22歳で結婚しました。お客だったんです。
── 流石です！お店の“ニュー早苗”はどなたかのお名前ですか？
伊東四朗さん 祖父が、学生寮を経営してて、名前が『早苗館』だったんですよ。そこからとったんじゃないかな。ここは支店で、元々はここじゃない場所で『キッチン早苗』っていう本店があった。だから『キッチン ニュー早苗』って事なんだけどね。
伊東加南子さん 主人が32歳の時にここにきて、38年目です。
── 『キッチン早苗』創業当時からあるメニューはどれになりますか？
伊東四朗さん ほとんどあったんじゃないかな。お客さんの要望で、組み合わせが増えていったって感じかな。
伊東加南子さん お酒も昔は日本酒とビールしかなかったんだけど、痛風になったお客さんが“ホッピー入れてくれ”とかね（笑）。
── サービス精神に溢れてますね。プラス100円でカレーライスになったり具沢山の豚汁になったり、ちょっと驚きです。
伊東加南子さん おかしいでしょ？儲かんないのよ。やめてほしい（笑）。
伊東四朗さん 一回やっちゃったら、もう駄目だね（笑）。戻せないよ。
── 頭が下がります。テイクアウトは対応されていますか？
伊東四朗さん 12，3年前までは出前もやってたんだけど、今はやめちゃって。その代わりにテイクアウトは対応してますよ。
伊東加南子さん 出前をやめた時、お客さんが“エーッ？じゃテイクアウトしてほしい！”って。デリバリーサービスの会社からは色々お誘いいただくんだけど断ってるの。2人だけでやってるから大変よー。ちょっとクックさん、ヘルプで入ってくれない（笑）？
── あははは！ お誘い受けちゃいました（笑）今後の展望や夢はありますか？
伊東四朗さん 夢ねー……。病気しないで、あと10年やれたら良いねって。従業員さんが2人か3人いた時はゆったりできてたんだけど、今は2人だけでやってるからね。今日だって朝5時半に来て仕込み。だから元気でいなきゃね。
伊東加南子さん 1日16時間労働！さすがに、コロナになってからは、祝日は休むようにしたけどね。昔は休みも無く日曜・祝日もやってて、お昼休憩も無く働いてた。
伊東四朗さん ひどいだろ（笑）。文句言わずによくやったなって。別に尻に敷かれてるわけじゃないんだけど……、やっぱり尻に敷かれてんのか（笑）。
── お二人が話してるだけで夫婦漫才ですね。今思いましたが、話し口調が志村けんさんに似てますよね！
伊東四朗さん 声が似てるってよく言われるね。
伊東加南子さん でも結婚する頃は、“高田馬場のジュリー”って呼ばれてたのよ（笑）。最近は高田純次って（笑）。
もう、ご夫婦最高！ユーモア溢れるお二人のおかげで、笑いが絶えない楽しい取材となりました。最後に、伊東四朗さん、伊東加南子さんと記念撮影し、お店を後にしました。美味しいご飯と笑いを有難うございました。
取材の最中も、下校中の小学生の女の子に対して、ドア越しに“お帰りー！”と声をかける伊東さん。“何かあったらここに飛び込んできて構わないからね！”と伝えてあるとか。地元の方に愛されているお店ならではの温かさで、見守り活動までしてしまうというご夫婦に感動です。
『キッチン ニュー早苗』が50年以上も町に愛されているのは、お料理の味だけじゃなく、人柄に味わいがあるからではないでしょうか？ 皆さんの周りにも、久しぶりに会いたくなっちゃう店主さんがいる思い出の「洋食」ありませんか？ 「洋食」という名の日本の食文化。まだまだ巡ってその想いや歴史、人や町に触れたいと思います。
キッチンニュー早苗
東京都新宿区下落合1-3-19
03-3371-8564
10:30～15:00、17:00～20:00
※新型コロナウイルス感染拡大等により、営業時間・定休日が記載と異なる場合がございます。ご来店時は事前に店舗にご確認ください。
Text：Cook Inoue
Photo：Takuji Onda
Edit：Takashi Ogiyama
クック井上。プロフィール
お笑いコンビ「ツインクル」のクック井上。です！ 芸人でありながら、食のイベントMC・料理教室講師・食のプロデュース等も！ ●フードコーディネーター●ホームパーティー検定●食育インストラクター●野菜ソムリエ●BBQインストラクター●アスリートフードマイスター●こども成育インストラクター●パエリア検定 など食に関する資格も多々あり。
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