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【時しらずからtokishirazuへ】カルト的人気服屋が、なぜ新丸子で復活したのか?

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服好きにとって、メンズショップの店主やスタッフと服の話をするのは何よりも楽しい。

マニアックで博識でクセがすごい店の“トリセツ”を紐解いていく連載に登場するのは、店の前のベンチでにこやかに野球のグローブをしている市之瀬智博さん。かつてメンズセレクトショップ『時しらず』のディレクターとしてぶいぶい言わせていた市之瀬さんが、ユナイテッドアローズ(UA)社から商標権を取得して、今年2月に川崎市中原区新丸子に『tokishirazu』をオープンしました。

【tokishirazuのトリセツ①】時しらずから、tokishirazuへ

屋号への愛着から店作りが始まった!

ファッション好きのFORZA読者なら覚えているはずのメンズセレクトショップ『時しらず』。2002年2月に第一号店がオープンし、ハイファッションとストリートファッションをミックスする“ハイストリート”という独自のスタイルをいち早く提案。そのディレクターを務めていたのが、オープン時に27歳だった市之瀬智博さん。『時しらず』は時代の先端を走っていましたが、2011年3月に惜しくも閉店しました。

それから10年の時を経て今年2月に、東横線・新丸子駅東口から徒歩約5分、綱島街道近くに、『tokishirazu』として復活。オープンして半年を迎えた店へ、市之瀬さんに会いに行きました。

――グローブがきれいなブルーでカッコイイです。

市之瀬 水道橋にあるグローブ磨き専門店の「BALLTOWN」に完全別注のグローブを作ってもらいました。硬式用のプロ仕様の内野手用グローブで、型付けまでしてあるので、この取材が終わって試合があってもすぐ使えます(笑)。


BALLTOWN×tokishirazuグローブ6万6000円/tokishirazu

――時しらずが、tokishirazuになったんですね。

市之瀬 以前から自分の店をそろそろやりたいなと思っていて、店の名前やコンセプトを考えていたんですが、去年4月の緊急事態宣言が出る前に、ふと、「今、時しらずの商標はどうなっているんだろう?」と思って、UA社に問い合わせたんです。

――それはやはり気になりますよね。

市之瀬 時しらずが閉店してから、いつまで経っても、何をやっても、「時しらずの市之瀬さん」と言われていて、それはそれでいいことだなと思っていました。それで、自分で店をやるなら、時しらずの屋号でもう一度ちゃんとやろうと。UA社が商標権を譲り受けることを快諾してくれて、去年の8月から店作りに取り組みました。時しらずの一号店が代官山にオープンしたのが2002年2月7日なので、今年の2月7日オープンを考えたのですが、7日が日曜日だったので、6日にオープンしました。

【tokishirazuのトリセツ②】ちょっとズレてる感じが◎

tokishirazuという名のもとに、コレットを作ろう!

――オープン日が1日ズレて、時しらずがオープンして20年目じゃなくて19年目で、大都会になった武蔵小杉のひとつ手前の新丸子と、ちょっとズレた感じが市之瀬さんぽいです。褒めてます(笑)。

市之瀬 自宅が新丸子にあって、ニュースで「川崎市中原区は一人暮らしが多い街」というのを見てから、改めて街をウォッチングすると、おしゃれなカップルや地元のファミリーが多いことに気づきました。駅も、都心から自由が丘、田園調布、多摩川をはさんで新丸子というローカル感もいいし、大手セレクトショップや飲食のチェーン店が多い武蔵小杉にはない空気感も好きだなと。

――確かに、“ひとつズレる”ことで意味が生まれますよね。

市之瀬 そんなに難しくは考えていませんけどね(笑)。

――店の内装も新しいロゴもカッコイイです。

市之瀬 店作りは、「tokishirazuという名前でやる以上はちゃんとやろう」とコンセプトを立てて、当時の時しらずを知っている内装チームが手掛けてくれました。ロゴも、漢字のタテ書きから横文字にして、新丸子の丸と、貴重な鮭のトキシラズの目を●で表現。フィッシュロゴも作りました。

――内装もロゴもブルーが効いていますね。

市之瀬 僕の中でのファッションショップは、今はなきパリのコレット(Colette)が最強で、ぶっちぎったセレクトショップなんです。そういう思いがあって、コレットのストアカラーであるコレットブルーを取り入れました。

【tokishirazuのトリセツ③】新世代をインキュベート!

気になる若手ブランドをきっちり育てたい

――tokishirazuの品揃えのコンセプトは?

市之瀬 自分のお金で店を出すので、まず「自分が好きなモノ」ですね。それから、自分が気になる若手ブランドや生活雑貨を揃えたい。まだ誰も目を付けていないようなブランドを自分のフィールドできっちり育てようと思っています。

――お薦めのブランドを教えてください。

市之瀬 原宿にあったショップ『still sequence(スティルシークエンス)』の渡辺陽平さんがオリジナルブランドとしてスタートした「TRANSPORT」を復活。僕は裏原宿の人が好きで、自分の中では、“過去と未来のブリッジ”的な存在としてラインナップしています。


TRANSPORT Tシャツ 6600円/tokishirazu

――TRANSPORTは秋物でも登場しますか。

市之瀬 背中にキース・ヘリングの作品が大きく入ったTRANSPORTのスタジャンが、tokishirazuエクスクルーシブとして登場します。


TRANSPORTブルゾン 価格未定/tokishirazu

――他に別注アイテムはありますか。


シェラデザインズ別注ロングコート 2万5300円/tokishirazu

市之瀬 昔からシェラデザインズの「60/40(ロクヨン)」クロスが好きで、tokishirazuらしいネイビー/ロイヤルブルーのロングコートを別注。首周りにボリューム感をつけるなどパターンから手を入れています。9月末には入荷予定です。

【tokishirazuのトリセツ④】店内で腰掛けて本を読んでもOK

商品に説得力が出るような本やZINE(ジン)、生活雑貨に注目

――tokishirazuのブルーを使ったオリジナルアイテムも多いですね。

市之瀬 tokishirazuロゴを入れたクリアの歯ブラシや、革製品の仕上げ用ブラシ、三重県津市のおぼろタオルに別注カラーをお願いしたOBORO KIWAMI CLASSICタオル、大阪の「THE FLAVOR DESIGN(ザ フレーバーデザイン)」のファブリックミストなどを揃えています。

――tokishirazuジーンズのセルビッチもブルーだとか。

市之瀬 時しらずで人気だったノンウォッシュデニムを継承するために、オリジナルで生地を作って、福山の工場で300本作りました。ブラックデニムで、オリジナルセルビッチがブルー仕上げです。

――写真集や本、ZINE(ジン)もバラエティ感があります。

市之瀬 書籍は昔から扱ってみたくて。tokisirazuでは、ファッションアイテムに説得力が出るような本やジン、生活雑貨を揃えたいと思っています。

――市之瀬さんの好きな本はありますか。

市之瀬 2011年にLAのキャラリーで開催された展覧会「POST 9-11」のカタログですね。あの9・11以降に頭角をあらわしたアーティスト9人の作品集ですが、空気感が今と似ているなと思います。

――この一角の段差はどうしてあるんですか。

市之瀬 両サイドを椅子として使えるように考えたので、気軽に本を見に来てください。

【tokishirazuのトリセツ⑤】オープンして半年の手応え

信念を持ってやっていれば、人は集まってくるものです

――オープンして半年になりますが、手応えはいかがですか。

市之瀬 「tokishirazu」でやってよかったなと思います。当時来てくれたお客さんと、当時高校生・大学生で買えなかったお客さんが来てくれて、本当にありがたいです。今、46歳ですが、お店を始めたのは年齢的に決して遅くないなと思いますね。

――コロナ禍の中でのスタートで、大変ですよね。

市之瀬 コロナのせいで、地方のお客さんから「店に行けない」という声が多くて、7月にオンラインストアを立ち上げました。その反面、店にいると、人と人の交流を求めるアナログに戻っている感じもあって、自分たちのコンセプトを貫いて、信念を持ってやっていれば人は集まってくるなと思います。

『tokishirazu』
川崎市中原区新丸子東1-841-2
営業時間:12:00~19:00
Instagram:@tokishirazu_shinmaruko
tokishirazu shop

Photo:Yuuji Hirose(Quand Photos)

Text:Makoto Kajii



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