FORZA STYLE - 粋なダンナのLuxuaryWebMagazine
FASHION 店主の拘りが強い店

ヴィンテージの印象を変える。「原宿キャシディ」八木沢さんと服の話をする大きな価値。

服好きにとって、メンズショップの店主やスタッフと服の話をするのは何よりも楽しい。マニアックで博識でクセがすごい店の“トリセツ”を紐解いていく今回は、フォルツァ世代なら知らぬモノなしの原宿の名セレクトショップ『原宿キャシディ』です。

取材で店に向かうとき、かなりの数のビルの1階が空き店舗になっているのを見ながら、角を曲がって原宿キャシディがあったとき、なぜかホッとしたことを八木沢博幸さんに話すと……。

【原宿キャシディのトリセツ①】なんといっても八木沢さん

「八木沢さんと話がしたいから……」という人が全国から集まる

「原宿という街をウォッチしていると、変化が絶えずあって、たとえばエルメスのようなビッグメゾンが青山ではなく原宿寄りに来たり、渋谷の宮下公園にMIYASHITA PARKができて、原宿とグンと距離が縮まったり、街の変遷はエキサイティングで楽しいですよ」と八木沢さん。

本日は、FORZA STYLEの取材なので、原宿キャシディのオリジナルアイテムできちんとコーディネートしてきたそうです。

コロナ禍にある現在は、「周りのビルなど空き店舗が増えていて、今後の不安もつきまといますが、一番大きい問題は人々のライフスタイルが変わったこと。極端な言い方をすれば、“洋服は必要か?”という話にまでなります。

でも、こういう渦中だからこそ、気分をリフレッシュできる洋服の価値も見直されていて、商品の仕入れも当然変わってきていますね」と言います。

「原宿にいると、若い人たちの流行りがカウンターカルチャーの連続のように刻々と変わっていって、それで流行りそうなモノが分かりますよ」という八木沢さんの言葉を聞きながら、店の中から外を行き交う人を眺めていると、確かにビッグシルエットのモノトーンコーディネートの人ばかりで、八木沢さんは約40年間、店の中から定点観測のように原宿の人たちを見続けてきたんだろうなとフッと胸が熱くなりました。

【原宿キャシディのトリセツ②】現在の店は1984年オープン

ずっと着続けていたモノを、「また買い替えようかな」と来る店

八木沢さんは1956年東京生まれ。デザイン専門学校を卒業後、デザイン事務所に2年勤めるが、好きな洋服の仕事がしたくて、「キャシディ」の経営母体であるミドリヤに入社し、1981年に原宿キャシディへ。84年に現在の場所で営業を始め、現在も仕入れ販売担当を務めています。


八木沢さんが着ているのは、原宿キャシディとシェラデザインズとのコラボ別注のベスト。ブランドを代表する「マウンテンパーカーの袖を切ったのが欲しいな」とオーダーして、今春登場。2万9700円

取材のアポイントのときに、この連載のテーマを伝えると、「自分は店主じゃないですよ、仕入れ販売担当です」と真面目に返してきた八木沢さんがうれしい瞬間は、「僕がキャシディに入る前から来ているお客さんと会ったり、親子2代で買いに来てくれたり、ずっと着ていた服を買い替えようかなと相談してくれるのが本当にうれしい」。

現在はスタッフ4名体制で、30社以上のブランドを揃えていますが、昔揃えていた並行輸入物は今は扱っていないとのこと。そういえば、自分がL.L.ビーンを初めて見たのはキャシディだったのを思い出しました。

【原宿キャシディのトリセツ③】トラッドの魅力に触れる

スルメのように何度も何度も味わって、擦り切れるまで着る喜び

八木沢さんが商品の仕入れで拘っているのは、「トラディショナルがベースで、一定のテイストがあって、長く着られるものですね。“これ、いいな”と擦り切れるまで着たり、買ってからだんだん愛着が沸くモノです」と言い、「アメカジのつまみ食いですよ」と笑います。

トラッドの魅力を尋ねると、何度も考え直しながら、「保守的だけど、質素だけど、ずっと着られるところ。時代を超えていいものというのが基本にあります」と答えます。


発売されたばかりの「キャシディ・ホームグロウン」のタグが付いたラグランスリーブのワークシャツ。「前を開けて着てもカッコイイ、シャツとアウターの中間のような感覚のシャツ」という発想からデビュー。1万4960円

「なぜこの仕事をずっと続けているのですか?」と訊くと、「洋服が好きなのはもちろんですが、自分は洋服とお客さんの仲介役。お客さんは期待して来店するのですから、期待以上のモノが伝えられたら最高ですよ。つまり、“モノだけど、コトと人”なんです」とご名答!

【原宿キャシディのトリセツ④】品揃えから時代が見える

エンジニアードガーメンツがガンガン売れる理由とは?

「キャシディの歴史の中でよく売れたモノですか? 80年代後半から90年代にかけて“渋カジブーム”がありましたが、キャシディはドレス寄りの渋カジだったので、そんなに恩恵は受けていないんですが(笑)、よく売れたのは、バリーブリッケンのパンツやアイクベーハーのシャツ、カジュアルならロックマウントのシャツの柄別注などが数量は出ましたね」と、思い出すように答えてくれました。


ブランド「MELPLE(メイプル)」の“WEEKENDER”シリーズのポロシャツ。「ハイブリッドな素材を使用した機能性満載のポロシャツで、オンでもオフでも着られます」1万3200円

現在は、「コンスタントに売れているのは、エンジニアードガーメンツですね。キャシディはMADE IN USAが強いというのもありますが、僕ら世代も20代も共感できる服を作っていて、世代を超えて人気です。今は一番多く仕入れています」。

【原宿キャシディのトリセツ⑤】幸福とは、幸服なり!

洋服は着てみないと分からないことがたくさんある

フォルツァ世代である40代の男性客ももちろん多いそうですが、「40代の男性で多いのは、結婚して、子供ができて、お小遣い制になって。でも洋服が好きだから、小遣いを貯めたり、奥さんのOKをもらったりして買っていくのを見ていると、本当に洋服好きが伝わってくるんですよ。最近では、ビシッとオシャレしたいからとネクタイを買っていったり、カジュアルの反動でジャケットを買ったり、お客さんを見ていると時代が分かります」と八木沢さん。


ブランド「Battenwear(バテンウェア)」の通称アイランドシャツ。「前身頃の胸元と下部に合計4つのポケットと、内側に一つ小さなポケットがある、週末に着るシャツです」2万5300円

「自分が40代の頃は、本当にたくさんの服を着たり見たりしましたが、こういうコロナ禍にあっても、服はやっぱり見ないと分からないし、着てみないと分からないことがたくさんあります。自分の仕事は洋服を介して人と会うことですが、お客さんに教わっていることが本当に多い。洋服を通して関わりができて幸せだなと思いますね。ファッションディレクターの青柳光則さんの著書の中に『すべての服好きに幸服を。』というのがあって感動したことがあります」と取材を締めてくれました。

原宿キャシディ
東京都渋谷区神宮前6-6-4
03-3406-3070
12:00~20:00
CASSIDY Online Store

Photo:Shimpei Suzuki
Text:Makoto Kajii



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