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日産マーチがモデルチェンジしない理由とは? 11年目の秘密に迫る

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安全装備や自動運転でますます高額化している現代のクルマ。上手に購入する方法は? さらに、所有してからも様々なトラブルやアクシデントが起きるのがカーライフ。それら障害を難なくこなし、より楽しくお得にクルマと付き合う方法を自動車ジャーナリスト吉川賢一がお伝えします。

現在、日本で発売されているマーチ(K13型)は、2010年7月に登場した4代目、すでに11年目を越えた古いクルマだ。タイで生産して日本へ輸入する、という、日産キックスが行っている方法を、いち早く導入したモデルでもある。

K13型は、先代K12型マーチの大成功を元に、「エントリーコンパクトカー」としての地位を盤石なものにする目的で開発されていて、価格を限界まで安くして、アジア圏を中心により多くのお客様の手に届くように、と開発されたモデルだ。

ライバルとなる、トヨタヤリスやホンダフィット、マツダ2など、他メーカーのエントリーコンパクトカーは、定期的にモデルチェンジが行われている中、取り残されていく日産マーチ。年々商品力が落ちていくのは承知のうえで、なぜ日産はマーチをモデル更新しないのか。

 

■小改良は行われている

マーチは、モデルチェンジは行われていないが、実は小改良が定期的に施されている。最後のアップデートは昨年の7月に行われており、この改良で「インテリジェントエマージェンシーブレーキ」(車両や歩行者との衝突回避・衝突被害を軽減)や、「踏み間違い衝突防止アシスト」が全車標準装備となった。

また、対向車を検知すると自動でロービームに切り替わる「ハイビームアシスト」や、高速道路などでのふらつきを検知して作動する「LDW(車線逸脱警報)」などの先進安全技術も標準装備となった。その結果、「セーフティ・サポートカーS<ワイド>(サポカーS<ワイド>)」の対象となり、マーチはサポカー補助金(65歳以上の登録車購入で最大10万円)の対象車となった。

2021年上半期で4942台が売れているK13型マーチ

とはいえ、「クルーズコントロール」や「レーンキープアシスト」といった、ライバル車ならば当たり前に搭載している運転支援装備は用意されていない。しかし、それでもマーチは2021年上半期で4942台(月平均では800台)、日産車の中では、エクストレイルに続く5番目に売れているクルマなのだ(2021年新車登録台数ランキング)。放っておいても売れてくれるならば、永く作り続けるのが企業としてはありがたい。幸か不幸か、マーチはそうしたクルマになってしまっているのだ。

 

■デイズ&ルークスの登場で存在価値を失った

日産は、三菱との協業によって、軽自動車の開発が可能となった。「デイズ」そして「ルークス」は、軽自動車初のプロパイロット、先進安全装備の数々、専用に開発した新型プラットフォームの採用など、マーチとは比較にならない気合のいれようだ。

軽自動車は、国内で需要があることから、十分な投資ができること、そして、三菱との協業で、軽自動車の開発と生産を、お互いの得意分野で役割分担できたことも、デイズとルークスに力を入れることができた大きな要因だ。日産はこれまで、軽自動車はOEM供給を受けていたが、三菱との協業によって、自らがやりたいように設計開発をすることができ、三菱は得意とする安定生産を引き受けるかわりに、日産の「プロパイロット」技術の共有をうけ、「Mi-Pilot」という名で、eKワゴン/eKクロス、eKスペースへと搭載することができた。

2021年上半期に5万台が売れて、軽自動車ランキングで5位となった日産ルークス

その結果、2021年上半期には日産ルークスは5万台(軽自動車で5位)、デイズは3万1558台、eKシリーズは累計1万9139台と、大きな実績を挙げることができた。ここまで育てば、エントリーカーとしては十分であり、これよりも上のクラスを、という顧客には、グローバルで販売されている最新型のノートをどうぞ、という売り方ができる。デイズ&ルークスの登場によって、マーチはその存在価値を見失ってしまったのだ。

欧州地域のみとなるマイクラは、現在K14型。スタイリッシュで非常にカッコよいが、日本導入は残念ながら可能性が低い

ちなみに、K13型までマーチとモデル共用であった欧州の「マイクラ」は現在、モデル更新されK14型となって販売されている。このK14 マイクラは、日本でも人気があり、日本市場への導入が期待されているモデルではあるが、コストやロジスティクスの問題、さらには、ノートとの顧客の食い合いなどの問題があり、おそらく実現は難しい。

 

■マーチは捨てるべきではない!?

日産には、サニー、ブルーバード、セドリック、プリメーラ、キューブ、ティアナと消滅していったクルマが多くある。それはどの自動車メーカーでも行われていることではあるが、日産は特に多く感じられ、簡単に捨てすぎているようにも思える。「車名」というブランドへの愛情がないメーカーに思えてしまうのだ。

例えば、ルノーのコンパクトカー・トゥインゴをOEMしてマーチとして売るのはどうだろうか。トゥインゴはボディサイズも小さく、しかも後輪駆動で、キャラクターの立った非常に面白いクルマだ。値段は今よりも上がるかもしれないが、お洒落な雰囲気を持ち、かつての名門「マーチ」の名に恥じない実力をもったクルマだと思う。

マニュアルミッションで乗るマーチNISMO。コンパクトスポーツカーとして、良いトコロをついているクルマだ。こうしたクルマはもう出てこないのだろうか。

マーチは1982年の登場以来、40年にわたって日産を支えてきてくれたクルマだ。その「マーチ」に敬意を払う意味でも、できれば「マーチ」というブランドを残す方策とってほしい、と日産ファンとしては願っている。

日産マーチの公式サイトはこちら

Text:Kenichi Yoshikawa
Photo:NISSAN,Renault
Edit:Takashi Ogiyama

吉川賢一ポートレート吉川賢一(自動車ジャーナリスト)1979年生まれ。元自動車メーカーの開発エンジニアの経歴を持つ。カーライフの楽しさを広げる発信を心掛けています。


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